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※俺設定全開です ※虐待の直接表現はあまりないです タイトル「ゆっくり訪問」 アパートに下宿している大学生である青年は、夜食の準備をしていた。 準備といっても、カップラーメンに入れるお湯を沸かすために、電気ポットに水を入れていただけだが。 磁石式コンセントをポットに接続したところで、ドアをノックする音が聞こえた。 「はいはーい」 気のない返事をしながら、宅配便でも来たのかと、不用意にドアを開ける。 誰もいない。 舌打ちしてドアを閉めようとしたところ、足下から声が聞こえてきた。 「むきゅ、ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちちていっちぇね!」 声の方に目をやると、そこにはゆっくりの成体ぱちゅりーと赤ありすがいた。 「なんだよゆっくりか…」 一時期、ペットとして飼育するのが流行った不思議生物ゆっくり。 当初は人語を解するので、犬猫なんかより躾けやすいだろうと考えられていた。 しかし、少しでも甘やかすとまるで自分が主人だと言わんばかりにつけあがる。 おまけに人語で罵詈雑言を浴びせてくるので、飼い主のストレスがマッハとなり、捨てられるゆっくりが後を絶たず、社会問題化した。 喋れないからこそ犬猫は可愛いのだと再認識させられ、ゆっくりブームはあっさり収束した。 青年の眼前にいるゆっくりも、おそらく捨てられたペットなのだろう。 そんな考えを巡らせていると、ぱちゅりーが話しかけてきた。 「むきゅ、おにいさんは ゆっくりできてる?」 いきなり質問されたため、青年は反射的に応えてしまった 「できてねーよ、今からレポートだよ」 ぱちゅりーは「予想通りッ!」といった表情を浮かべて言った 「そうよね、ゆっくりできていないわよね!」 「できちぇないね!」 わざわざ赤ありすが復唱する。 青年は、これからレポートという現実から無意識のうちに逃避したい願望に捕らわれ、このゆっくり遊技につき合ってしまっていた。 「そんなおにいさんに ろうほうよ!」 「りょうぽうにょ!」 「この ゆっくりする ほうほうが かかれた ごほんをよめば、ゆっくりできるわ!」 「ゆっくちできりゅよ!」 「いまなら ごはんと こうかんしてあげるわ!」 「あみゃあみゃ ちょーらいね!」 今度は青年が「予想通り」といった表情を浮かべる番だった 「なんだよ、やっぱり集りか」 片手でシッシと追い払う動作をしながら言った 「ゆっくりに餌やるのは条例違反なんだよ。なつかれても迷惑だしな。帰れ帰れ」 「むきゅ!なにいってるのよ!これは きちょうな ごほんなのよ!」 ぱちゅりーはもみあげに器用に挟んだ小さなチラシのようなものを盛んに振り回す 「とくべつに ごはんと こうかんしてあげるって いってるのよ!」 「あみゃあみゃ、ちょーらいね!」 「いらねー、つってんだろーが、ボケが」 青年は騒ぎ立てるぱちゅりーと赤ありすを蹴飛ばした。 クリームやカスタードをまき散らされては叶わないので、思いっきり手加減して。 コロコロと転がって、フェンスに激突する2匹のゆっくり。 「もう来るんじゃねーぞ」 青年はダメージに震えながら立ち上がる(?)2匹を一瞥すると、ドアノブに手を掛ける。 体が弱いとされるぱちゅりーとは思えない回復力で立ち直ると、青年に向かって叫んだ 「まっでぐだざいぃぃ〜!ぱちゅは ごのごを ぞだでなぐちゃ いげないんでずぅ〜!」 「みゃみゃ〜!」 今度は泣き落としかよ。 呆れる青年だが、先ほど同様レポートからの逃避行動を取ってしまう。 腕組みして足でドアの開放状態をキープしつつ、ぱちゅりーの話を聞いてみることにした。 「ぱちゅと ありすは すっきりして あかちゃん うんだけど、ありすは しんじゃったの!」 ぱちゅりーは目から洪水のように涙を流しながら青年に訴える 「ぱちゅは かりが へただから、あかちゃんに ごはんを ちゃんとたべさせられないの! だから、ゆっくりできる ごほんと ごはんを にんげんさんに こうかんしてもらってるの! だって、ぱちゅには そうめいな ずのうしか ないから!」 「みゃみゃ〜!」 赤ありすがぱちゅりーに泣きながら頬ずりしている。 シングルマザーか… 青年はちょっと情に絆され、ささっと周囲を見渡した。 誰もいない。 丁度、さっき友人とファミレスに行った際にガメてきたスティックシュガーがあった。 この程度の袋なら、ゆっくりでも噛みきれるであろう。 青年はそれを泣き喚くぱちゅりーの帽子に差し込みながら言った 「ほら、コレやるから、さっさと巣に帰れ」 「むきゅ!むきゅ〜ん、おにいさん ありがとう!」 「ありがちょー!」 「この ゆっくりできる ごほんと こうかんね!」 もみあげに挟んであったチラシのようなものを、器用に口にくわえ直し青年に差し出した。 青年は流れで思わずそのチラシのようなものを受け取る。 さて、そこに書かれているという、ゆっくりできる方法とは… 『美白乳天使ホワイトエンジェル 95分10000円 チェンジ可…』 「…これは『ゆっくりできる方法』じゃなくて『すっきりできる方法』じゃあ、ボケェッッ!!!」 青年は今度はインサイドキックでゆっくり親子を、潰さないよう配慮しつつ、アパートの出口方向に蹴飛ばした。 「「ゆべぇっ!!!」」 道路に着地し、そのままコロコロ側道まで転がってゆく。 「ゆぅっ!ぱちゅ!おちびちゃん!」 アパートの出口あたりから、転がるぱちゅりーと赤ありすを追いかけるようにありすが飛び出した。 「むきゅ〜うぅぅん…」 「ゅぎゅうぅぅ…」 目を回しているぱちゅりーと赤ありすを舐めるありす 「ぺーろぺーろ、いたいのいたいの、とんでけー!」 どうやら先程ぱちゅりーが話していた、死んだはずのありすのようだ。 興醒めした青年は、ドアを閉め鍵をかけたのであった。 青年は友人に先程の出来事を報告するため、電話をかけた。 同じくレポート作成作業中のはずだから、怒鳴られるかと思ったが、電話せずにはいられなかった。 はたして、電話に出た友人からは、意外な声が発せられた。 「おう、今 俺ンとこにゆっくりがきたぞ!」 青年の友人もアパート暮らしだ。 友人がレポートに取りかかろうとノートPCに電源を入れたタイミングで、玄関をノックする音が聞こえた。 「はいはーい」 宅急便かな、何か頼んだかな?と不用意にドアを開けてしまった。 「こんにちわ、おにいさん!れいむだよ!」 でかい声が足下から響いてきた 「おにいさん、れいむに ごはんを ちょーだいね!」 バスケットボールサイズのゆっくりれいむは畳み込む 「れいむが『しあわせー♪』すると、おひかりさんが でるんだよ!」 ぽよんぽよんと跳ねながら、ヒートアップしてゆく 「おひかりさんを にんげんさんが あびると ゆっくりできるんだよ!」 れいむはそこで一区切りして俯いた。 そして、はち切れんばかりの笑顔を友人に向けながら言った 「だから おにいさん!れいむに ごはんを ちょーだいね!!!」 「うるせぇ、ボケが」 冷淡に言い放つと、れいむの顔面につま先をめり込ませた 「わけわかんねー事、叫んでンじゃねーよ」 フェンスまで吹き飛んだれいむは「ゆぎゅっ!!!」と呻き、蹲って震えている。 閉まるドアに、ゆっくりとは思えないスピードで入り込むと、友人に叫んだ 「まってね おにいさん!れいむの おひかりさんを あびたくないの!?」 友人は足で見事なストッピングを決め、そのままれいむを踏みつけながら言った 「…なんじゃい、その『おひかりさん』つーのは?」 とりあえず、青年と同じくレポートからの逃避行動として、れいむの話につき合うことにした。 「ゆゆっ!ばかな おにいさんに もういちど せつめいしてあげるね!」 友人の足にれいむが跳ねようとしている力が伝わってくる。 ウネウネして気持ち悪い。 「れいむが おいしいごはんをたべて 『しあわせー♪』すると、れいむから おひかりさんが でるんだよ!」 足から伝達するウネウネのテンポが上がってきた 「たいようさんのような おひかりさんは とてもゆっくりできるよ! おにいさんの あんこさんも きれいになるんだよ!」 友人はれいむの話を整理してみた。 1.れいむが餌を食べると体が光る 2.れいむから放たれた光を浴びると、人間はゆっくりできる 3.れいむから放たれた光を浴びると、餡子(血液?)が綺麗になる 「…訳が分からん」 そもそも、ゆっくりが餌を食べて「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」した時に光ったのを見たことがない。 もしかして、新種のゆっくりか!? 餌をやることは条例違反だが、周囲に誰もいないし、学生として学術的好奇心を満たさずにはいられない。 友人は先程青年と一緒に行ったファミレスからガメてきたスティックシュガーを与えることにした。 「オラ饅頭、あまあまやるぞ」 「ゆっ!あまあま!ゆっくりしないで はやくちょうだいね!」 足をどけてやると、上を向いて大きく口を開ける。 玄関のすぐ横がキッチン、手の届くところに調味料入れがあり、そこにスティックシュガーを入れていたので、すぐに取り出せた。 大きな口を開けて待機しているれいむの口の中に砂糖を流し込む。 れいむは涙を流しながら 「あまあま、あまあま、しあわせー♪」 とびきりの笑顔になったが、「おひかりさん」とやらは友人には確認できなかった。 「おい、れいむ。『おひかりさん』はどうした?」 「ゆゆっ?いま おひかりさんが でたでしょ?わからないの?ばかなの?しぬの?」 れいむが嘘をついているのでなければ、「おひかりさん」は出たのだろう。 ただしそれは、人間には見えない。 そして、健康になったりゆっくりしたりしていない現実があった。 「意味ねー」 友人はアパートの出口に向かって、れいむを蹴り出した。 あとにはれいむの絶叫と、友人が閉めたドアの音だけが残った。 「とゆー訳だ」 「条例違反じゃねーか」 友人の話に、青年はつっこんだ。 しかし、友人は反論する 「ちげーよ、盛り砂糖しようとしたらゆっくりが勝手に食べたんだよ。俺は被害者だよ」 「しかし、お前んとこのアパートと結構離れてんのに、似たような事件がおこるとはな…」 「多分、どこででも発生してると思うぜ」 二人で今回あった事件について考察してみた。 ゆっくりは、採餌やペット化など、成功体験が個体群間においてものすごい速度で伝播する。 メカニズムは不明だが、会話によるもの、繁殖時の餡子記憶伝達によるものが考えられる。 今回のドアをノックする方法も、石を銜えて頭突き(?)するという行動は従来見られなかったものだが、青年と友人のケースで共通していることから、伝播したものだと推測できる。 「つまり、どこかのゆっくりがピンクチラシを渡したら餌を貰えたのを、誰かが見たか他ゆっくりに話したか」 「ピンクチラシをポストに投函すると逮捕されちゃうから、もしかしたら、業者がゆっくりにやらせてんのかもな」 友人は人間の関与を疑っている 「ゆっくりに『このチラシを人間にあげれば、ご飯貰えるよ』とか言って」 「ゆっくりが『人間さんに言われたんですぅ』ってゲロして、チラシから業者たどればバレバレじゃん」 「そんなもん、チラシは盗まれましたって言やすむだろ。それに奴らが人間に餌をたかるのは日常茶飯事」 「おひかりさん、はなんなんだろうな」 「プリクラの撮影風景でも見たんじゃない?大体みんな笑顔になるから、それ見て『人間は光を浴びるとゆっくりする』と思いこんだか…」 「血液はなんだよ」 「アレだろ」 「アレか…」 次の日、大学に行ってみると、他の学生のアパートや自宅でも似たような出来事があったらしい。 実際にゆっくりが訪問してきた日付は各々でかなり違うのだが、人間の記憶などいい加減なもので、話題になったときが事件のあったときと錯覚する。 なので、市民はゆっくりが一斉に家庭訪問したかのような印象を受けた。 ゆっくりが餌をたかること自体は珍しくない。 問題なのは、その方法であった。 石を銜えて頭突きでノックするものだから、ドアに傷が付く。 アパートなどでは、全てのドアに大体高さ30センチくらいの所に傷やへこみができていた所もあった。 また、都市に住むゆっくりは車と住居の区別ができず、「人間さんが出てくるから、ここ(車)もおうちだね」 という勘違いをして、車のドアに傷・へこみをつけた。 アパートやマンションの管理組合や管理会社、車のオーナーなど市民、そして自治体を巻き込んで大論争がおこった。 管理組合や市民は自治体がゆっくり害の危険性を見過ごしていたと損害賠償を請求し、自治体は自然災害と突っぱねる。 それまで大して話題にならなかった、野良ゆっくりの「おうち宣言」や「物乞い」、繁殖しすぎて道路に飛び出しスリップ事故の原因になる事例までがクローズアップされ始めた。 怒りの矛先は、ゆっくりショップや愛好家にまで向かう。 ショップや愛好家が飼えなくなったゆっくりを捨てているのではないかという風評まで流れた。 犬や猫と違って、明らかに損害をもたらすゆっくりを排斥するという運びとなるのに、時間はかからなかった。 都市からゆっくりの姿が消えた。 あとがき 読んでいただいた方、ありがとうございます。 家のポストにチラシが放り込まれているのを見て思いつきました。 あれって、ゴミになるからいやなんですよね。 これまで書いた作品 ゆっくり爆弾 ゆっくりの光
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2779.html
蟻地獄とゆっくり ズシャッ。 その柔らかい砂の感触は、なぜか、ぜんぜんゆっくりしていなかった。 「ゆ、ゆぅ?」 れいむは餡子を引き締めて、さらさらとした砂に身をまかせたい欲求を我慢する。 「ゆっくr……ちがうよ!これはゆっくりしちゃいけないすなさんだよ! れいむはかたいじめんさんのほうがゆっくりできるよ!」 このれいむの餡子は、幾百回もの世代交代を経て練りこまれた一級品だった。 欲求よりも、その餡子が「危険」と打ち鳴らす警鐘にれいむは従う。 「ゆっくりもどるよ!ゆー……しょ!」 土の上に戻るために跳躍しようと考える。 体を地面に押し付け…… ミシッ。 「ゆー!?」 伸び上がるために体を砂に押し付けると、そのたびに体は余計に砂へと沈んでいく。 「ゆゆ!やめてね!れいむはすなさんとはゆっくりしないよ!」 れいむは懸命に伸び上がろうとし、そのぶんだけ砂の中へと沈んでいく。 「どーじてやめてくれないのおおおお!?やだっていっでるでじょおおおお!!??」 死の恐怖がれいむを捕らえる。 「やだ……やだよ……」 れいむはつがいのまりさの事を考える。いつか育まれるであろう、二人の間のおちびちゃんの事を考える。 今までゆっくりしてきた沢山の仲間のことを考える。 「やだよぉぉぉぉぉぉ!!!れいむしにたくないよ! 、もっともっとみんなとゆっぐりしたいよぉぉぉぉぉ!!!!」 「すなさん……ゆっぐりとまっでね……かわいいでいぶをじめんさんにもどじてね……」 暴れるだけ余計に沈むと悟ったれいむは、少しずつ自分を土の底へと運ぶ砂に身を任せるほかはなかった。 砂はただ無情に、れいむを生の終端へと追いやっていく。 「ゆゆ!れいむ!れいむーーー!!」 「ゆへへ……とうとうまりさのこえがきこえてきたよ……これはきっとげんちょうだね…… さいごにまりさのこえをきかせてくれてかみさまありがとうね……ゆっくりしていってね……」 「れいむってばぁ!!」 はっ、と我にかえる。 その声は聞き間違えようもない、そして幻聴でもないほんものの愛しいまりさの声だ。 狩りから帰って来ないれいむを心配して出てきたのだろう。れいむはまりさのために警告の叫びを上げた。 「まりさ!!きちゃだめだよ!ゆっくりできなくなるよ!!」 「でいむぅぅぅぅぅぅ!?」 まりさは泣きながら、蟻地獄の底へと向かうれいむを見送ることしか出来ない。 「まりさ……れいむはまりさとであえてしあわせだったよ…… れいむがしんだら、まりさはべつのゆっくりしたゆっくりとゆっくりしていってね…」 「でぎないよぉ!!ぜっだいぜっだい、ぞんなごとでぎないよぉ!!」 砂が目に入り、れいむは目を閉じた。 「ゆ……」 暗闇の中に、からからと回る走馬灯が浮かびあがり、それは餡子に残った記憶を呼び覚ます。 おかあさんれいむの茎で目覚めた日のこと。 はじめてむしさんを捕まえた日のこと。 まりさと出会った日のこと。 まりさと、さまざまな場所でゆっくりしたこと―― 「!」 走馬灯の中に、一つの可能性があった。れいむはおぼろげな記憶を懸命にたどり、 その可能性を拾い上げる。 「ゆ!!れみりゃだ!れみりゃだよ!まりさ!あのれみりゃをつれてきてよ!」 以前、にんげんさんの罠にかかったれみりゃを助けてやったことがあった。 「うー!うー!だずげでぇぇぇぇ!!!ざぐやぁぁぁぁ!!!!!」 「れみりゃだよ!いまならにげられるから、そろーりそろーりにげようね!」 「……」 「れいむ?どうしたの?」 賢いれいむはもちろんれみりゃの脅威を熟知していた。 「いだいどぉぉぉぉぉーーーー!!おぜうざまのあんよがぁぁぁぁーーー!!!」 「れいむ?」 しかし、それでもれいむはれみりゃの前に飛び出した。 足を鉄の顎に噛み込まれたその姿がにあまりに可哀相で、助けずにはいられなかったのだ。 「でいぶぅぅぅぅぅ!!!まりざぁぁぁぁぁぁ!! とっでもとっでもかんしゃするどぉぉぉぉぉぉ!!!! このごおんはぜったいわすれないどーーー!!!」 そのれみりゃはそう言うと、友情のしるしにかり☆すま☆だんすを披露して、 「れみぃはあかちゃんやさくやとくらさなきゃならないからいっしょにはいられないどぅ… だけど、こまったときにはいつでもよんでほしーどぅ! れいむとまりさをこまらせるやつはれみぃがぽーい☆しちゃうどー♪」 そう請け合ってくれた。 「れいむはとってもばかだよ!でも……かっこよかったよ、れいむ……」 「ゆ、ゆゆぅー……」 れみりゃほども力があれば、蟻地獄からゆっくり一匹引っ張り上げるのはたやすいことだ。 しかも、その棲家も知っている。とても運のいいことにここからそう遠くはない。 まりさが必死で跳ねてくれれば、必ず間に合うはずだ。 「あのれみりゃなられいむをひっぱりあげてくれるよ!ゆっくりよんできてね!!」 「でいぶぅぅぅぅ!!!だずげてあげられなぐてごべ……いまなんでいっだの? あのれみりゃってどのれみりゃのこと?れみりゃはゆっくりできないよ?」 「なにいっでるのまりざ!?あのれみりゃはあのれみりゃだよ!はやぐじでよぉぉぉぉ!!!」 「ゆ……れいむ……」 「おでがい!!おでがい!!おでがいだがらおもいだじでよぉぉぉ!!!!! れみりゃよんでぎでぇぇぇぇぇぇ!!!!!」 危機に瀕したれいむだからこそやっと思い出せたものを、そうでないまりさが思い出せるはずがない。 「れ、れいむ……?」 れいむの言葉を理解できないまりさは、れいむが苦しさのあまり狂ってしまったと思った。 「ごべんねぇぇぇぇぇぇ!!!だずげられないばりざをゆるじでねぇぇぇぇぇ!!!」 砂は少しずつ、少しずつ……泣き叫ぶれいむを蝕みながら流れる。 「おでがいだよぉぉぉぉ!!でいぶまっでるがら!!まっでるがられびりゃよんでぎでぇぇぇぇ!!!!」 れいむは力の限り叫び続けた。 「まりざ!!はやぐじでよ!!まにあわなぐなっぢゃうよ!!」 「まりざ!!おでがい!!ゆびぃ!もうれみりゃじゃなぐてもなんでもいいから、ゆぷっ!でいぶを……」 「まりざ!ぐるじいよ……まりざ……どごにいるの……」 「まりざ……?」 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2852.html
ゆっくりずれないでね あるところにゆっくり一家がいた。 このあたりは餌が豊富にあるのだが、父まりさがものすごくおいしいものを 見つけたというので山から降りてきたのである。 「「む〜ちゃむ〜ちゃちあわしぇ〜」」 果物をむしゃむしゃと食べるゆっくり一家、 親ゆっくり達は子ゆっくりの満足そうな顔を見て幸せそうである。 「まりさ、おちびちゃんたちおいしそうにたべてるね」 「すごくあまくておいしいね、れいむ」 おいしいのはあたりまえである。 ゆっくり一家が食べているのは品種改良に改良を加えた結果、村の特産品になるほど 美味しくなったイチゴである。 農家の人がどれだけ苦労したか等わからないゆっくり一家はつぎつぎとイチゴを平らげていく。 「ゆ〜れいむおなかいっぱいだよ〜」 「まりさもだよ〜」 「「ちわわしぇ〜」」 ゆっくり一家は満足し巣に持ってかえる分のイチゴを口に 含むとほくほくと幸せそうな顔で巣に戻っていった。 途中農家の人に追い掛けられたが距離が充分だったので問題なく逃げることが出来た。 「ゆぅ・・・こわいおじさんがでたからしばらくはちかづかないほうがいいね」 一家はイチゴを諦めたわけではないが、農家のおじさんが怖いので しばらくは普通に狩りをしようと決めた。 最後ちょっと怖かったが巣に帰ってからはとてもゆっくりできて みなゆっくりしながら幸せな眠りについた。 その幸せそうなゆっくり一家に忍び寄る人間が一人、彼の名は虐待鬼意さん 今日もゆっくりの駆除を兼ねて虐待するために森に来たのである。 「ゆ〜ゆ〜」 「幸せそうに眠りやがって・・・」 彼はゆっくり達を起こさないように一匹づつ、取り出し、頭に何かをかけていく。 彼がゆっくりにかけている物はゆっくり駆除剤を薄めた物である。 ゆっくり駆除剤は霧状にして適当にばらまけば ゆっくりのみを死滅することができる優れものである。 ドスなどの大きな固体にも効き、ヘリなどを使えば山全体の ゆっくりを死滅させることも簡単にできる。 今回、鬼意さんはゆっくりを駆除しに来たのではない、それならばわざわざ ゆっくり駆除剤を薄めたりしない。 彼の目的はゆっくり達の髪の毛を殲滅することである。 「これで全部だ・・・」 彼はゆっくり一家を起こさず全てのゆっくりの頭にゆっくり駆除剤を振りかけることに成功した。 全員起こさずに成功したのはこれが初めてで、ゆっくりが起きた場合は騒がれると 面倒なので声を上げる前に潰してやった。 今回の虐待はゆっくりに気付かれないことが最も重要なのである。 「ゆっ・・・ゆっ・・・」 「そろそろ効いてくるな」 先ほどまで幸せそうな顔をしていたゆっくり一家の表情が曇り始める。 そして徐々に髪の毛が抜け始め、5分もするとゆっくり達の髪の毛は全て 抜け落ちてつるっぱげ一家が完成した。 (次も慎重にやらないとな・・・) 鬼意さんはあらかじめ別のゆっくり家族から生きたまま頭皮を引きはがして作った カツラをゆっくり達に被せていく (これで最後か・・・) 鬼意さんは最後の一匹である母れいむの頭にカツラを被せようとしたが 髪の毛が抜けて寒くなったため、ブルブルっとふるえて目を覚ます。 「ゆ〜・・・ゆっ!にんげんだ〜!」 れいむは人間に驚き声を上げる。 その声に驚いたゆっくり一家も目を覚ます。 「ゆ〜ここはれいむたちのおうちだよ!にんげんはでていってね」 鬼意さんは咄嗟の判断でれいむの頭にすばやくカツラをのせる。 そしてれいむが巣の外で眠っていたので戻してあげようとしたと適当に嘘をつき 巣に戻してやる。 「れいむだいじょうぶだった?」 「だいじょうぶだよれいむはなんともないよ!」 そう言って自分が元気であることをアピールしようと巣の中で軽く飛び跳ねる。 その瞬間・・・ フワッ れいむ頭が一瞬涼しくなる。 れいむは少し違和感を覚えたが気付いてはいない。 まりさや子ゆっくり達は一瞬れいむの髪の毛がフワっとなった気がしたが半分寝ぼけていたので 気付かなかった。 その様子を巣の外で見てしまった鬼意さんはふきだしそうになる。 (今あたまがフワッとした!フワッとした!) 鬼意さんはゆっくりの巣の入り口を塞いでやり、そのまま山を下りていった。 「ゆ〜まだおきるのにははやすぎるからゆっくりねむろうね」 ゆっくり一家は再び眠りについた。 翌朝、ゆっくり一家はいつも通りの朝を迎える。 親れいむが一番始めに目を覚まし他のゆっくり達を起こしていく、 しばらくゆっくりしたあとに朝食を済ませ父まりさは狩りに出かけていく。 「ゆっくりかりにでかけてくるよ!」 「がんばってねまりさ!」 「「おとーしゃんがんばっちぇにぇ!」」 れいむと子ゆっくり達の見送りで元気一杯になったまりさは元気よく跳ねて狩りに向かっていった。 「さて、おちびちゃんたちきょうはてんきがいいからひなたぼっこにいこうね」 「「ゆ〜」」 ここ最近とても寒くて子ゆっくり達は外で遊ぶことが出来なかった。 しかし今日は暖かいので表で日向ぼっこをすればとてもゆっくりできると思い外に出てにいった。 れいむ達は目的地まではゆっくりと這っていったのでカツラがずれることはなかった。 しかし、野原について子ゆっくり達が遊び始めるとそうはいかない。 「ゆーこっちだよまりしゃ」 「まっちぇ〜おね〜しゃ〜ん」 仲良く追い掛けっこをしてあそぶ子ゆっくり達、 末っ子のまりさは姉ゆっくり達を追い掛けるがからだが小さいのでなかなか追いつくことができない。 末っ子まりさはなんとかして追いつこうと懸命に飛び跳ねる。 「ゆびぃっ!・・・いちゃいよ〜!」 石にぶつかってしまい末っ子まりさは少し餡子を漏らして倒れる。 泣き声に気がついた姉ゆっくり達が集まってくる。 末っ子まりさは泣いていれば姉たちが優しくしてくれると思っていた しかし・・・ 「ゆっ!なんかへんにゃこがいるよ」 「ほんとうだにぇ!かざりもつけてないしゆっきゅりできにゃいゆっくりだね!」 「ゆっきゅりできないゆっきゅりはどこかいっちぇね!」 末っ子まりさは石にぶつかった時にカツラをおとしてしまったのである。 姉ゆっくり達は体当たりをし始める。 末っ子まりさは姉ゆっくり達が何故自分を攻撃するのか解らなかった。 「ゆぶっ!やめちぇ!やめちぇ〜おね〜しゃ〜ん!」 「おまえみたいなゆっくりできにゃいこはれいみゅのいもうとにいないよ!」 「まりしゃのいもうとはもっちょかわいいよ!」 必死で姉ゆっくりにすがり寄ろうとする末っ子まりさだがそのたびに体当たりを されて突き飛ばされる。 「お・・・ね〜・・・しゃん」 「おまえみちゃいなへんなこはいもうとじゃないよ!ゆっくりできないゆっくりはしにぇっ!」 最後の力を振り絞り長女れいむに助けを請うが長女れいむは大きく 跳ねて末っ子まりさを踏みつぶす。 その際に姉れいむの頭がフワッと浮いた気がするがそれに気付いたゆっくりはいなかった。 母れいむはちょっと離れたところでしーしーをしていたが末っ子まりさの泣き声や 姉ゆっくり達の騒ぐ声を聞き、急いで跳ね寄ってきた。 「どおしたのおちびちゃんたち?」 「ゆっおかーしゃんれいみゅたちしゅごいんだよ! ゆっきゅりできないこをやっちゅけたんだよ!」 「「やっちゅけたんだよ」」 子ゆっくり達は母れいむにゆっくりできない子を倒したと自慢げに話す。 母れいむが子ゆっくり達が倒したと言う餡子をまき散らしつぶれた饅頭を見つめる。 末っ子まりさに髪の毛がついていれば子ゆっくり達がとんでもないことを してしまったことに気付いたかもしれない。 しかし、母れいむは 「ゆっくりがんばったね、まだちいさいのにかりができるなんてすごいよ! すこしはやいけどおちびちゃんたちはおひるごはんにしようね」 母れいむは末っ子まりさだったものを子ゆっくり達が初めて狩りに成功した餌として食べるように言った。 子ゆっくり達もむ〜しゃむ〜しゃちあわせ〜といって餡子を平らげてしまった。 「そろそろかえろうね、おかーさんおなかすいちゃったよ」 「まりしゃももっとたべちゃいよ〜」 「れいみゅも〜」 お腹を空かせたれいむ達はゆっくりと巣に帰って行く 一方狩りに出かけた父まりさは 「まってねまりさのためにゆっくりしてね!」 まりさはごちそうであるちょうちょを追いかけ回し、ぴょんぴょん跳ねていた。 このあたりはたくさんごはんが採れるので多くのゆっくり達が集まる狩り場であった。 しかしゆっくり達は普段なら他のゆっくりのことなど気にせず狩りに勤しむのだが今日は様子が違った。 まりさの頭が変なのである。 「まってね!ちょうちょさんまってね!」 まりさがぴょんぴょんはねるたびに少しづつカツラが帽子と共にずれていくのである。 「あのまりさぜったいあたまおかしいよ・・・」 「むきゅあきらかにずれてるわね」 「・・・あれはとかいは?・・・とはいえないわね・・・」 「わからないよ・・・あのあたまはわからないよ・・・」 狩り場にいたゆっくり達はまりさの頭が気になって仕方なかった。 しかし本人が気付いてるのか気付いていないのかわからないので 声をかけずらかったのである。 「どうする?・・・おしえてあげる?」 「たしかにいってあげたほうがいいともうけど・・・」 「すごくずれてる・・・げんかいよ・・・」 「そうとうびっくりするんだねーわかるよー」 まりさに頭のズレはすでに限界に達しており、いつ落ちてもおかしくない状態である。 そしてまりさがちょうちょを花にとまっているところを捕まえようと飛びかかった瞬間! 「「「まりさあたまいかれてんぞ!!!」」」 限界に達したゆっくり達が一斉にまりさに声をかけ始める。 まりさはまだ自分の頭の異変に気付いていないらしく、 自分の頭をいかれてると言いつめるゆっくり達、まりさはおかしくないよと怒りぷくぅと膨れる。 「きもいよ!わからないよ!」 「こんなのとかいはじゃないわ!」 「どぼじでそんなごどいうの〜?」 「むきゅっ!みんなおちついて!」 このままではケンカになってしまうと判断したぱちゅりーは 言い争うまりさとその他のゆっくりの間に割ってはいる。 そしてまりさを見つめゆっくりと話し始める。 「まりさ・・・あなたあたまがさむくない?」 「ゆぅ?・・・そういえばあたまがすーすーするよ」 まりさは頭に違和感を持ち始める。 続けてぱりゅりーは話続ける。 「まりさ・・・はっきりいうわ、あなたあたまはげてるわよ・・・」 「ゆっ!まりさはげてないよ!」 まりさは自分は禿げてないと怒るが、ぱりゅりーは落ちた帽子とカツラの方を見るように言う。 「あれはまりさのぼうし!ぱちゅりーありがとう!」 帽子といっしょにカツラも落ちているのにまりさはまだ気付かない。 まりさはカツラごと帽子をかぶる。 カツラを適当にかぶったためにあたまがこんもりして違和感が増大する。 「「「まりさあたまいかれてんぞ!」」」 ふたたびまりさ意外の全ゆっくりに頭をツッこまれてしまう。 そんなゆっくり達にまりさは再びぷくぅと膨れるが、ぱちゅりーは まりさに説明するため湖に連れて行った。 「まりさみずにうつってるまりさをのぞいてごらん」 「なんで?そんなことしてもかわいいまりさがうつるだけだよ?」 そう言ってまりさは湖をのぞき込む 「ゆぅ?あたまがへんだよ」 まりさは髪型がおかしいので帽子を外そうと頭を下げた瞬間・・・ バサッ まりさの髪の毛が地面に落ちて再び頭がすーすーする。 「まりさのあたまをなおす・・・・よ?」 まりさは水に映る自分の姿をみて絶句する。 そこには髪の毛が一本も生えていないゆっくりできない自分がいたのである。 「・・・!ばりざのがみのげがー!!!」 「おちついてまりさ!いったいなにがあったの?」 ぱちゅりーは泣き騒ぐまりさに問いかけるがわからないとしか答えない。 しかたないのでまりさの髪の毛と帽子を戻してやりまりさに注意をしておく。 「いいことまりさこれからはぼうしをふかくかぶってなるべくあたまがづれにくく なるようにしなさい、もしぼうしをおとしたりかみのけをおとしたりしたらゆっくり できなくなるわよ」 ぱちゅりーに言われまりさは深く帽子を被ることになった。 そして殆ど獲物も採れないままいったん巣に戻ることにした。 そして場所は再びれいむ一家の巣 「おちびちゃんたちとてもゆっくりねむっているよ」 幸せそうな子ゆっくり達を見てれいむもうとうとし始める。 昨日鬼意さんに起こされて、余り眠れなかったのだ。 れいむは少しの間だけ、お昼寝をすることにした。 れいむが本格的な眠りにはいってからしばらく・・・ 「ゆ〜ゆ〜・・・ゆっ」 一匹の子まりさが目を覚ました。 あたりを見わたすとみんな眠っており再び自分も眠ろうとするがあるものを 見つけたため一気に目が覚める。 「ゆぅ!あれはゆっきゅりできないゆっくりだよ!」 子ゆっくり達が眠っている間、寝相が悪く寝返りをした子れいむのカツラが地面に落ちてしまい、 子まりさはそれをゆっくりできないゆっくりだと判断したのだ。 「ゆ〜またごはんをとっちぇおきゃ〜しゃんにほめてもらうよ!」 子まりさはしょろーりしょろーりと子れいむに近づいていく、 そしてぷっくりとしたほっぺたに一気に噛みつく 「ゆびっ!」 子れいむは幸せな夢の中から一気に現実に引き戻される。 自分の体に何が起こったのかわからない子れいむは大きく息を吸い込み悲鳴を上げようとしたが 立て続けにくちびる付近を喰いちぎられたためにひゅーひゅーとしか鳴けなくなってしまった。 そしてさらに数カ所を噛みちぎられる。 「ひゅひぃ・・・いひゃい・・・おひゃ〜ひゃん(ゆびぃ・・・いちゃい・・・おきゃーしゃん)」 「とどめだよ!はやきゅしんでにぇ!」 子まりさは穴だらけになった子れいむを踏みつぶす。 同じような体格のために一回の踏みつぶしではなかなか死なない。 子まりさは何回も子れいむの上で飛び跳ね、そのたびに穴の開いた所から餡子が吹き出る。 「もっひょ・・・ゆっひゅひ・・・ひひゃはっひゃ(もっちょ・・・ゆっきゅり・・・しちゃかった)」 「ゆ〜まりしゃはつおいよ!」 餡子を失い皮だけになってしまった子れいむの上で子まりさは得意気にする。 さっそく母れいむに褒めてもらおうとして起こそうするが、 母れいむはかなり疲れていたために一向に起きる気配がない。 しかたないので長女れいむを起こそうとして体をゆする。 「ゆ〜ゆ〜・・・どうしたの?・・・っ!」 「おねーしゃん、きいちぇきいちぇ」 子まりさは目を輝かせて長女れいむに話しかける。 すごいねまりさは強いんだねと言って欲しくてたまらなかった。 「ゆっくりできないこはおうちはいってこないで!」 子まりさは長女れいむの体当たりを受けて突き飛ばされてしまう。 子まりさはコロコロと転げて壁にぶつかる。 「・・・??・・・」 あまりにも予想できない行動に子まりさは痛みすら忘れて思考停止する。 子まりさが攻撃された理由はさきほど暴れ回った際にカツラを落としてしまったからなのだが、 そんなことはわからない、何故自分が攻撃されたのかが全く解らなかった。 そして徐々に痛みを感じ泣こうとした瞬間、 長女まりさが子まりさの顔面を踏みつぶす。 「ゆっ!・・やめっ!・・おえっ!」 「ゆっくりできないゆっくりしないでしんでね」 子まりさは悲鳴を上げようとするたびに顔面を踏みつけられそのたびに襲いかかる鈍い痛みに 悲鳴をあげることもできないまま徐々に死に近づいていった。 「もっちょ「さっさとしね!」ぶびぃー!」 長女れいむの子ゆっくりにしては強力な踏みつぶしで子まりさは顔面を潰されて 口から餡子を勢いよく吐いて絶命した。 「「ゆ〜どうしちゃの〜?」」 騒ぎに気付いた子ゆっくりの何匹かが目を覚ます。 長女れいむは安心させるために目覚めた妹ゆっくり達に近づいていくが 様子がおかしい、まるで敵を見るような目で長女れいむを見ている。 先ほどの騒ぎで長女れいむのカツラも取れてしまったのである。 「ゆーもうゆっくりできないこはたおしたからあんしんしていいよ?」 「ゆっくりできないできないゆっくりはでてってね!」 妹ゆっくり達が長女れいむに襲いかかる。 長女れいむと妹ゆっくりの体格差はそこそこあったので 体当たりを仕掛けた妹ゆっくりが跳ね返されてコロコロ転がっていく。 「ゆー、もうおこったよ!ゆっきゅりしね!」 妹ゆっくり達のカツラが転がった拍子に取れてしまう。 目の前で起きた奇妙な現象に長女れいむは混乱する。 「ゆっ!いもうとたちがゆっくりできないゆっくりになっちゃったよ!?」 「ゆっくりしちね!」 長女れいむが混乱している間にも妹ゆっくりの攻撃は続く。 そして、ゆっくりの攻撃の中で最大の殺傷力を持つ噛みつきを長女れいむのほっぺたに仕掛ける。 「ゆがっ!いたいよ!」 長女れいむはたまらず体を思いっきり回転させて、噛みついてきた子れいむを引き離す。 そのさい少し頬が破れたが致命傷にはほど遠い。 逆に放り投げられた子れいむは巣の中に落ちている前々からどけようと思っていたが めんどくさくて放置しておいたとがった石に顔から突っ込んだ。 「・・・ぶぅっ!」 子れいむの口のなかにとがった石が入り込み歯を砕き喉の奥を引き裂く、 子れいむはゆっくりと口から石を引き抜く、その瞬間大量の餡子が口から流れでる。 「ごぼっ・・・たひゅけ・・・」 子れいむが突き飛ばされたところから一番近くで眠っていた子まりさに助けを請う。 しかし、子まりさは起きた瞬間に悲鳴をあげる。 「ゆぎゃ〜!ゆっきゅりできないゆっきゅりだ〜!」 この声を境に眠っていた子ゆっくり達は全て目をさます。 母れいむはまだ起きない。 「きもちわるいゆっくりはしねっ!」 「ゆひぃっ!」 石に顔をぶつけた子れいむは姉妹ゆっくりの輪の中に突き飛ばされる。 次々と踏みつぶしや噛みつきなどをされて、顔をぶつけた子れいむは ぐちゃぐちゃに潰されて絶命した。 その際に飛び跳ねた何匹かはカツラが取れてしまう。 いきなり横に現れたゆっくりできないゆっくりに子ゆっくり達は混乱するが すぐに攻撃を仕掛け始める。 「ゆっきゅりできないゆっきゅりは!ゆぎぃっ!かみつかないで〜」 「まりしゃのおうちにかっちぇにはいってこなっ!いじゃ〜い!」 「もうやめちぇ〜!いちゃいよ〜!」 「にゃんでゆっくりできないゆっくりがいきなりよこにいるの〜?」 カツラのとれた子に攻撃すると自分のカツラがとれてしまい他のゆっくりに攻撃されてしまう。 「ゆびゅっ!やめちぇっ!たしゅっ・・・ゆびゅっ!」 「いじゃいぃぃかみちゅかにゃいで〜」 「まりしゃのおかおが〜」 「ゆぎゃ〜っ!めがみえにゃいよ〜」 ほとんどの子ゆっくりのカツラは取れてしまい巣の中はバトルロイヤル状態である。 あるものは踏みつぶされて中身が飛び出しそうになり、あるものは顔を噛みちぎられ、 むき出しになった歯をガチガチとならし、またあるものは目が飛び出してブラブラと 垂れ下がった目玉は昔流行ったオモチャのようである。。 「やめてね!みんなやめてね!」 長女れいむは何回かカツラを落とす所を見て何が起こっているのかを理解した。 何匹かが自分にも攻撃してくるが軽く突き飛ばして、地面に落ちている自分のカツラをかぶる。 そして母親に事態をなんとかしてもらおうと必死になって起こす。 「はやくおきてね!ゆっくりしないでね!」 「ゆ〜どうしたのおちびちゃん」 母れいむがのんきに目を覚まし長女れいむを見つめる。 「ゆっ!おちびちゃんどうしたの!?」 「おかーしゃんいもうとたちをとめてあげて!」 長女れいむの言葉を聞いて母れいむは騒ぎのする方を見る。 「ゆっくりできないゆっくりがいっぱいいるよ!」 「おかーしゃんあれはいもう」 長女れいむはあれは妹達だと言おうとしたが母れいむはその言葉を聞かずに さっさと子ゆっくり達を潰しにかかった。 「おかーしゃ・・・たしゅけっびゅびぃ!」 「いちゃいよ・・・おか・・・ぶちゅっ!」 「おきゃーしゃんまりしゃをたしゅけてくれちぇありがっちょびっつ!」 「れいみゅのおきゃーしゃんはつよいんだよびこぅ!」 母れいむは次々と子ゆっくり達を潰していく、母れいむの攻撃は 強力で怪我していたものはもちろん長女れいむに襲いかかっていた比較的怪我の少ない 子ゆっくり達も一瞬のうちにつぶれた饅頭になって死んでいった。 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・ゆっくりできないゆっくりはみんないなくなったよ これでゆっくりできるよおちびちゃんたち・・・おちびちゃんたちは?」 母れいむが部屋を見わたすといるのは長女れいむだけである。 長女れいむは歯を食いしばり涙を流しながら母れいむを見つめている。 「おちびちゃんたちどこにいったの〜?」 「おかーさんがいまぜんぶころしちゃったんだよ!」 長女れいむの言った言葉を母れいむはそんなことしていないと否定する。 長女れいむは泣きながら今殺したのはカツラのとれた妹達だと説明するが、 そんなこと言う子はゆっくりできないよと怒るだけである。 「だきゃらあれはかみのけがとれたいもうとたちなの〜!」 「かみのけがとれるわけないでしょ!おかあさんもうおこったよ!」 母れいむは自分の言葉を全く聞かない長女れいむに体当たりをした。 母れいむは軽くやったつもりだが実際には結構強くやってしまい、 長女れいむは勢いよく飛ばされてしまう。 長女れいむは壁に後頭部をぶつけカツラが少しずれて涙目になる。 母れいむの怒りはおさまっておらず追撃が来ると覚悟を決めたその時 「ただいま・・・なにこれ〜!」 父まりさが巣に帰ってきて部屋の惨状に驚く、 「おかーしゃんがいもうとたちをころしちゃったの〜!」 長女れいむは痛みをこらえて父まりさに事情を説明する。 もし父まりさが髪の毛が取れることを知らなかったら母れいむと同じように怒ったであろう。 しかし父まりさは一度カツラがづれて仲間から酷いことを言われているので長女れいむの言葉を理解した。 「れいむもうおこったよ!そんなこというこはもうおいだすよ!」 「でていくのはれいむだよ!」 母れいむが長女れいむを追い出そうと体当たりをしようとするが逆に父まりさの 体当たりを受けて転げていく。 「ゆぶぅ・・・まりさなにするの〜!」 母れいむは涙目になって父まりさに問いつめる。 「こどもたちをころしたれいむはしねっ!」 「れいむこどもたちをころしてないよ!」 2匹は大喧嘩になりボヨンボヨンと跳ねてお互いぶつかり合う。 ゆっくり同志の喧嘩なので他の動物からみたら何を遊んでいるんだとしか見えないが、 本人達はいたって本気である。 やがて喧嘩は激しくなりついにお互いの体を噛みつきあう殺し合いにまで発展してしまった。 2匹は噛みつき合いながら巣の外に転げていった。 「まりさにがみずくな〜れいむはじね〜」 「まりざごそじんでね!れいむはわるぐないよ!」 2匹は喧嘩に必死になりすぎて普段は危なくて近づかない崖の付近にまで 転がっていることに気がつかなかった。 やがて2匹は足を踏み外す。 「ゆぎゃあああだじゅげで〜〜〜!」 「いじゃー!」 2匹は何度も絶壁に体をぶつけ、そのたびに皮がやぶれてぼろぼろになっていく。 しかし運悪く2匹は谷底に落ちても死ぬことができずに、ズタズタに引き裂かれた 体で必死に助けを求める。 「いじゃ・・い・・・じにだぐ・・・ない」 「どぼじで・・・ごんな・・・ごどに・・・」 しかし助けに来るものはだれもおらず、それどころかカラスが寄ってくる始末である。 2匹は生きながらカラスについばまれて死んでいった。 「おかーさんたちどうしてかえってこないの?」 巣に残された長女れいむはケンカになって出ていった親ゆっくり達を待ち続けた。 しかし、親ゆっくり達が二度と帰ってくることはなかった。 やがて長女れいむは空腹になり、妹たちの体を食べてしばらく過ごしたが、 それもなくなり仕方なく外に狩りに出かける。 「ゆ〜かりにいくよ!」 長女れいむは初めての狩りに緊張気味だが、幸いこの付近には餌が豊富にあったので 簡単に餌を見つけることができた。 れいむはホクホク顔で巣に戻ろうとしたとき、強い風が吹いた。 「ゆうっ!かぜさんゆっくりふいてね」 長女れいむは風が吹くとカツラがずれてゆっくりすることが出来ないことを理解していた。 しかし手もないゆっくりはカツラを抑えることが出来ず、カツラは風に乗ってどこかに飛ばされてしまう。 「ゆ〜!かみのけさんまってねとんでいかないでね!」 長女れいむは必死になって追い掛けるがカツラはどんどん飛ばされて行きついに見えなくなってしまった。 その後、ゆっくり駆除剤がヘリによって散布されゆっくりは絶滅した。 やまには大量のハゲ饅頭の死骸が転がり、長女れいむもその中の一匹として虫や動物や細菌によって 土に返されていった。
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小腹の空いた俺は昼食を取ろうとファストフード店に立寄り Mサイズのコーラとハンバーガーを注文、 2Fへの階段を上って窓際の列の端に座った。 窓から見下ろせるものは交差点、横断する人、向かいの果物屋、その左隣の眼鏡屋。 ガラス窓の外の声は聞こえない。 聞こえるのは2つ離れた席でお喋りをする、奥樣方2名の楽しそうな会話だけだ。 俺はただただボーッっとハンバーガーの包みをカサカサと開きながら、窓の外に目をやった。 交差点の向こう、果物屋の左隣、眼鏡屋の前の歩道に居るものへ目をやった。 (ゆっくりしていってね!) ガラス窓の向こうで恐らくその様な事を言っているのであろう。 眼鏡屋の前に居るあの丸っこいのは"ゆっくり"という生き物。 黒い髪に紅いリボンを巻き、まん丸な輪郭を持つ、 まるで人間の顔をデフォルメしたかの様な生き物。 所謂"れいむ"だ。黒髪のゆっくりは大抵そう呼ばれる。 大きさはバスケットボールくらいだろう。 何処から来たのか知らないが、何処でもいい。どうせその内誰かが処分する。 期待外れなゆっくり達 作者:古緑 (ゆっくりしていってね!) ガラス窓の外の、ふてぶてしい笑顔を浮かべたゆっくりはきっとそう言いながら 果物屋に向かうのであろうエプロン姿の太ったオバさんに近づいて行った。 眼鏡屋の前の歩道は狭い。 だからオバさんは寄って来るゆっくりを避ける為に少し車道に出て、 迂回する様にしてゆっくりを振り切っていった。 (…ゆっくり?ゆっくりしていってね!) その背中に向かって不思議そうに叫ぶゆっくり。オバさんは振り返らない。 少なくともこの辺でのゆっくりに対する対応なんてあんなモノだ。 例え俺があのオバさんでも同じルートを取ってゆっくりを避ける。 どんなに暇だったとしてもゆっくりと一緒にゆっくりなんてしない。 (ゆっくりしていってね! れいむと一緒にゆっくりしていってね!) オバさんに無視された事で生来の自信に満ちた表情にも陰りが見える。 それでも健気に周りの人間に呼びかけるゆっくり。 次にゆっくりが向かっていったのはだらしない格好をした中年男性。 無論彼も通り過ぎて行くだけ。パチンコにでも行くんだろう。 (…ゆっくり…… …ゆっ!ゆっくりしていってね!) 寂しそうに男性を見送った後、また次の通行人に話しかけるゆっくり。 次は杖をつくお爺さんだったが 彼は避ける事もせずに真正面からゆっくりとゆっくりを突破して行った。 本気で気付いていなかったのかもしれない。 その背中を見送るゆっくりの、斜め45°に引かれていた眉はハの時に変わっていた。 ゆっくり。 彼等は俺がまだ子供だった頃、20年以上前だ。 彼等は突然どこからか現れ、世の話題を攫った。 或る人は宇宙人と、或る人は妖精と、悪魔と呼んだ者さえ居た。 なんせあの様にワケの分からない生き物だ。 餡子の詰まった饅頭なのに何故か動けて、人の言葉(日本語)を解し、更に喜怒哀楽の感情を持つ。 話題にならないわけが無い。 あの頃はテレビ、新聞、雑誌、様々なメディアを通して彼等の姿を見る事が出来た。 だがそれも現れてから数年間の間だけ。 俺が成人を迎える頃、世間はとっくにゆっくりに対する興味を失っていた。 研究員だの科学者だの、その辺の人にとっては興味の尽きない存在に違い無いだろう。 しかし俺みたいな好奇心の薄い人間にとって ゆっくりは次第に『ただ言葉を解し、中身が餡子の生き物』それだけの存在になっていった。 あれだけ不思議生物と騒がれていたのに何の事は無い。 超能力を使えるわけでもない。その体に何か重大な秘密を秘めているわけでもない。 ただ跳ねて叫ぶだけ。ゆっくりしていってね、と。 馬鹿にしてるとしか思えない。 テレビなんかはゆっくりの番組をしつこく流し続けていたが いい加減飽きられて姿を消すのに大して時間は掛からなかった。 横でお喋りしてる奥様方も、ゆっくりに対する興味なんてもう持ってないと思う。 ガラス窓の下の不思議生物よりも旦那のムカつくところを話してるんだから。 (ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!れいむと一緒にゆっくりしていってね!) 窓の下ではゆっくりが叫ぶ様に人々に呼びかけている。 俺のところにまで声が届くくらいに大きな声で呼びかけている。 その声を聞きつけ、眼鏡屋の中からカジュアルな格好をした店員が出て来た。 ここに居て聞こえるくらいなんだから、下でのあの声は営業の邪魔でしか無い。 (ゆっ!おじさん!れいむとゆっくりーー ーーーーーゆぶっ!) 店員はゆっくりのリボンを摘んで持ち上げ、反対側の歩道に放り投げた。 反対側の歩道には何の店も無く、工事中なのでスチール製の真っ白い壁がそびえ立っている。 気絶したのか、れいむはピクリとも動かない。顔から落ちたんだから無理も無いだろう。 ゆっくりは痛い目に遭ったら何処かに消え失せるのが通常だ。 だからあのれいむも起きたらきっと何処かへ行く。 そしてその先で何時か死ぬ。 別にここが駅前だから、ゆっくりの事が嫌いだからという理由から 人はあの様な冷たい態度を取るわけではない。 さっきも言った事だが、もう誰もゆっくりに対する特別な興味を持っていないのだ。 少し前は違った。 喋るペット、元気なペット、モチモチと柔らかい体をした、可愛いペット、 そんな魅力的な特徴に皆が惹かれ、ゆっくりがペットとして大流行した時代も有った。 しかし今じゃペットゆっくりの人気もガタ落ち。かつての大人気っぷりは見る影も無い。 その理由は"喋れる"ゆっくりに対して人々が期待を持ち過ぎた事に有った様に思える。 自分の言う事を理解してくれるから手が掛からない。暇な時は楽しくお喋り出来る。 初めゆっくりを飼った人はそんな風に都合良く考えていた者が多かったのだろう。 しかし逆だったのだ。 何故ならゆっくりは人間にとって都合のいい事ばかりを喋るぬいぐるみではなく、 人間と同じ様に聞き、感じ、思考して喋る生き物だったから。 しかも人間並みに、或いは人間以上に喜怒哀楽の激しい正直な生き物だったからだ。 そんな生き物と上の様な期待を抱いていた人間が一緒に暮らして食い違いが起こらない筈も無い。 飼えばゆっくりは無条件で自分に懐き、何の文句も言わないなんて事も有り得ない。 そして多くの飼い主を落胆させたのは 言葉が通じるのに中々ゆっくりが言う事を聞いてくれないだけでなく、 不平不満、そして要求している事を自分に分かる言葉で持ちかけてくる事。 これは飼い主にとって面倒臭い事この上無く、"時と場合"に応じて非常に不快なものにすらなる。 手がかからないと期待してた人達からすれば尚更の事だ。 手の掛かり具合は腕白盛りな人間の幼児と遜色無いものなのかもしれない。 そんな本当は手のかかるゆっくりを上手に躾けられた飼い主がどれだけ居たか。 それは現状が物語っている。 そして肝心のゆっくりとのお喋りも、多くの人が『思っていたより』楽しくないと言う。 理由は人とゆっくりの知能の程度には一定の開きが有る為、会話がし難い事。 そしてその知能の差故に各々が持つ関心も異なるからだ。 ゆっくりは美味しいご飯が好き、楽しい玩具が好き、『ゆっくり』の話が好きだ。 だが人間側のちょっと難しい話になるとあまり興味を示さず、嫌がってしまう。 よく分からないからだ。愚痴なんかは当然嫌い。 しかし多くの人が望んだのは後者の様な会話だったんじゃないだろうかと思う。 また当然の事ながら知識や語彙も少ない為、出来る会話の幅も広くない。 大抵の場合ペットゆっくりは家の中でお留守番だから知識も語彙も碌に増えないだろう。 飼い初めの頃はまだ良いだろうが、そのうち話す事も尽きて会話をしなくなるかもしれないな。 『ゆっくり』の話がしたくて飼ったワケでは無いのだろうから。 兎に角、人語を解するから飼ったという人は拍子抜け。 勝手な事だが人は喋るゆっくりの事を『期待外れ』と感じたのだ。 小さくて可愛いと考えてた人の期待も外れる。 人の元では平均寿命8年と長生き。最終的に体高だけで60cmを超えるのも珍しくない。 デカくなったゆっくりは俺から見てもあんまり可愛くない。というか怖い。 ちなみに食う量も増えてゴールデンレトリバー並に食費がかさむ。 デカくなったのは更に重くノロくなる為、家の中での様々な面において邪魔になる。 かと言って庭なんかで飼うと寂しがり、大きな体をしてゆんゆん泣く。 それでも外に放って置くと知らないうちに死んでたり いつの間にか恋仲になった他のゆっくりと子を成していたりもする。 これが悪夢ってヤツだろう。とてもじゃないが笑えない。 手が掛からないとの期待はこんなところでも裏切られる。 人々の勝手に抱いていたゆっくりへの多大な期待はことごとく裏切られ、 ペットとしてのゆっくりへ関心も次第に薄れていった。 その結果かなりの数のゆっくりが無責任にも街に捨てられ、未だに問題になっている。 捨てる主な理由は仲違いしたから。反抗されたから。二匹飼いしたら自分と話さなくなったから。 妊娠したから。意外とつまらなかったから。どれも最高に無責任なものだ。 今ではもう、そんな面倒なゆっくりを飼う人間は ゆっくりの事が本当に好きな僅かな人達だけになった。 そして俺はゆっくりが何の為に人間の前に現れたのかを心の底から理解出来ていない。 ゴチャゴチャ考えてるうちにハンバーガーはもう食い終わった。 あとは尽きるまでコカコーラをズルズルやるだけ。 兎に角ゆっくりはもうペットとしてさえ人の関心を惹かない。そもそもあまり向いてなかったのだ。 久しぶりに見たから気になったが、そろそろどうでもいい存在になってきた。 保健所の人間が来ないうちにとっとと消え失せる事をお勧めしておく。 (ゆっく…り…ゆっぐり”ぃ…) 永らくガラス窓の下でダウンしていたゆっくりだが ようやく起きたようで、泣きながら体を起こした。 泣いてるのはゆっくりしていって貰えないのが辛い為だろう。 (ゆっぐり”じでいっでね”!ゆっぐじじでいっでね”ぇ!!) 涙混じりのガラガラ声で叫び出すゆっくり。周りには誰も居ないのに。 あれだけ痛い目に遭わされたのに消え失せないとは。 何がそんなにあのゆっくりを駆り立てるのか? どうして人をゆっくりさせたがるのだろうか? 俺は彼等と"ゆっくり"した事が一度だけ有るが、それも未だ謎だ。 ゆっくりの『ゆっくり』と言えば俺は俺で期待を裏切られた事が有る。 随分前に駅前のベンチで本を読みながら友人を待ってたら ゆっくりが近寄って来た事が有ったのだ。 『ゆっくりしていってね!』とお決まりの言葉を言いながら。 俺はちょっと困ったが、当時はまだゆっくりに興味が残っていたので 読んでいた本をカバンに仕舞ってゆっくりと『ゆっくり』する事にした。 『ゆっくり』と名乗るくらいなんだからとんでもなくゆっくりしている筈だ、 もしかしたら他人をリラックスさせる力を秘めているのかもしれない、と期待しながら。 しかしなんの事は無い。ゆっくりは空いたベンチに乗って日向ぼっこをしてるだけ。 普通にゆっくりするだけだったのだ。 勝手に期待しておいてこんな事を言うのもなんだが、ガッカリした。 ゆっくりの『ゆっくり』なんてゆっくりじゃなくても出来るし 別に俺が居なくても出来る、ごく普通の事だったのだ。 期待外れもいいところだった。 その日を境にゆっくりは俺にとって完全に無価値な存在に変わった。 (お、おにいさん…れいむと、れいむと一緒にゆっくり…) 窓の下では汚れたれいむを避ける様に、また一人通り過ぎて行く。 彼はipodらしき物を弄りながら歩き去って行った。 どうでもいいのだ。ゆっくりとの『ゆっくり』なんて。 それこそ何十回も聞いていい加減飽き気味のポップス以上にどうでもいいのだろう。 「あれ、○○さん、あそこに居るのゆっくりじゃない?」 「あらホント、いまどき珍しいねぇ。 そう言えばね、この前○○さんが電話で話したことなんだけどーーー」 隣の奥様方が今更ゆっくりに気付いたように話題に上げる。 ずっと俺と同じ方向見ながら話していたのに(ガラス窓に反射して丸わかりだった) 会話のクッション程度のものにゆっくりを使ったのだ。 そんなモンだ。例えゆっくりが少しくらい泣いてたとしてもな。 (ゆっぐり”ぃ…… ゆ”っぐ りぃ” ぃ”い”ぃ”!!) コーラを飲み干して立ち上がると、 俯いて本格的に泣き崩れるゆっくりの姿が見えた。 あそこで泣いてる分にはまだ良いが、果物屋の店員がボソボソ何か喋っている。 もしも交差点を超えてアッチ側にいったら 動けなくなるくらい強く蹴られるかもしれないな。 俺等人間の中でも、彼等にとってゆっくりは特に邪魔なんだから。 もう休み時間は終わりだ。 俺は紙コップの底にヘバりつく氷を4、5個口に放ってガリガリ噛み砕きながら、 トレイの上のモノをゴミ箱に捨てて店を出た。 生暖かい風が頬を撫でる。近所に予備校があって高校生が良く通る所為だろうか この歩道は黒ずんだガムやらツバやらがこびり付いてて汚い。 こんな小汚い歩道でゆっくりとゆっくりするくらいなら 今みたいな店の中で一人でゆっくりしてた方がずっと良い。誰だってそう思う。 「ゆっ、ゆっくり!ゆっぐりしていっでね!」 交差点で信号を待つ間、左から嬉しそうな声が聞こえて来た。 左方向に視線をやるとあのゆっくりが居た。 頬を涙でベショベショに濡らしているが笑顔満面。嬉しそうだ。 立ち止まっている俺を見て勘違いしたのかもしれないな。 "ようやくゆっくりしていってくれる"って。 「ゆっくりしていってね!」 ビデオ屋に寄って帰ろう。 最近ずっと行ってなかったから新作テープの取れたのが沢山有る筈だ。 そんな事を考えながら、信号が青になったのと同時に俺は歩き出した。 口の中の氷はもう無くなっていた。 ーENDー
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ゆっくりの掃き溜め。 そこは奇形ゆっくりや人間に虐待され五体(?)満足でなくなったゆっくり達が唯一生きられる場所。 もともとはとあるゆっくりの群れが住んでいたのだが餌となるものを採り尽くしてしまったため群れが別の場所に移ったのだ。 ろくな食料も無く近場に水場も無い。 しかもここは外敵となる獣や大型の鳥が多く生息する。 そんな場所のため普通のゆっくりは近づこうともしない。 迫害されたゆっくり達が暮らしていける場所はそんな所しかなかったのだ。 幸い巣穴は元の持ち主であったゆっくりの群れたちが大量に掘っていたため多数存在した。 自らの巣穴を掘る力すらない彼女達が何とか生きて…そして数日、数十日のうちに死んでいく環境が存在していた。 「ゆぅ!ゆぅ!」 いつものように複数人分の餌を採りに行っていき集落へ帰って来たれいむ。 彼女はただ飾りを失っただけというこの集落ではもっともましな状態だった。 しかし彼女は食事すらできず苦しむ仲間の姿を我慢できなかったのだ。 気づけば動けぬ仲間達のために餌を採ってきていた。 だが自分に可能な限界の量の食料を採ってなお足りなかった。 朝、日が昇ってすぐに餌を採りに行き、日が暮れてようやく巣に帰り着く。 そんな生活が一月ほど続いていた。 しかしもともと餌は少なく外敵も多い場所。 ゆっくりには採れない大型の果実が多くありそれを餌とする獣が多くいる場所なのだ。 獣に襲われ逃げ帰ることもしばしばだった。 実際同じ志を持った仲間達はその多くが命を落とし、多くが罪悪感を持ちながらも諦め自分の分の餌だけを探していった。 (こんなところではおわれないよ…!しんでいったみんなのぶんまでがんばるよ!) そんな決意を持ってこのれいむは今日も狩を続けていた。 「む、こんなところにゆっくりが?」 そこに突然現れたのは全身を白い服に包んだ人間の青年だった。 「ゆ?おじいさんだあれ?」 れいむのいうとおり青年と言うにはその人間はあまりにも疲弊していた。 頬は痩せこけ髪は白くその表情からはあまりにも生気が無い。 まさしくその外見は老人のそれに近かった。 「私は旅の者だよ。ここは君達の集落かい?見たところ皆あまりゆっくりしていないようだが…」 「ゆぅ…みんなびょうきやけがをおってるの」 れいむはこの青年にこの集落の事情を話した。 どの群れも自分たちを受け入れてくれないこと。 ここがそんなゆっくり達が集まった場所であること。 採れる食料が限界に来ていること。 青年は黙ってそれを聞いていたがやがて口を開いた。 「よし、私に任せなさい。」 そして奇跡が始まった。 青年が足の焼けて動けないゆっくりに触れればそのゆっくりは元気に跳ね回り始めた。 生まれつき目が見えないゆっくりに触れればその目が開いた。 また、青年は時折集落を離れるとゆっくり達が取れない果物を大量に採ってきた。 まさに奇跡がそこにあった。 いつしかこの集落は「奇跡のゆっくりプレイス」と呼ばれゆっくり達に広まった。 そのうわさを聞きつけ多くの迫害されていたゆっくり達が集まった。 集落を襲おうとするゲスなゆっくり達もいたが人間でもとりわけ体の強い青年の力には到底及ばず撃退された。 迫害されていたゆっくり達の奇跡がそこにあった。 彼女たちの本物のゆっくりプレイスが確かにそこにあったのだ。 ある、暑い日。 いつものようにその集落のうわさを聞きつけたとあるゆっくりまりさが青年の前に寝かされていた。 「ゆ!まりさはあしがわるいんだよ!さっさとなおしてね!びょうにんはいたわるものだよ!」 「ふむふむ、そうか」 青年はゆっくりのふざけた態度にまったく不快感を示さずにその言葉を受け入れた。 目の前のゆっくりは確かに足が悪いが少しすりむいた程度のものだ。 正直青年が手を出すまでも無い。しかし、 「わかった、俺が直してやろう!」 「ゆ!ものわかりがいいじじはゆっくりしていいよ!ゆっくりしないでさっさとなおしてね!」 「まあそう焦るな、この足を直すゆっくり秘孔は確かここだ!」 ドス! 「ゆがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!いだい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!!!!!!!!」 「ん?間違ったかな?」 「ゆ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っあ゛っあ゛ゆ゛びでば!!!!!!」 ボン!!! 盛大な音を立ててまりさは爆発した。 「ふむ、ここも違ったか。だがここはここで面白い。」 そうメモを取りながら青年はつぶやいたのだ。 「ゆ゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!ゆ゛っぐりでぎな゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!!」 「や゛べでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!い゛た゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 「ゆ゛べがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぶびら゛!!!」 ゆっくり達の地獄がそこにあった。 青年が一度ゆっくりに触れればそのゆっくりは苦しみながら死んでいった。 あるものは一日中死ぬような痛みに泣き続け干からびた。 あるものは餡子を自分の意思とは関係なく死ぬまではき続けた。 あるものは交尾もしていないのににんっしんっし無数の茎を生やし絶命した。 あるものは全身から液状化した餡子を激痛と共に噴出し続け死んだ。 「おにいさん!これはどういうことなの!?」 青年が集落に来て最初に会ったれいむが彼に詰め寄った。 今の集落の異変は間違いなく彼によるものだ。 いつの間にかおじいさんからおにいさん呼び名を変えた彼に事情を話してもらわなくてはならない。 彼女の集落内の饅頭にしては賢い頭は誰から見ても明らかな犯人をゆっくりでは唯一突き止めていた。 「おお!お前か!探していたんだぞ!」 そんなれいむの疑問を一切無視し青年はれいむを抱きかかえた。 「飾りこそ無いが肉体はゆっくり一倍健康かつ強靭!お前は最高の木偶になる!」 「な、なにいってるのおにいさん!ゆっくりしないでせつめいしてね!」 そんなれいむの叫びを一切無視し彼女を診察台の上におくと、彼はいきなり指を突き入れた。 ドス! 「ゆぎっ゛!!!」 いきなりの激痛に短く声が漏れる。 れいむは抗議の声を上げようと再び口を開いた、しかし 「っ!!!!!!っ!!!!!」 口から声が出なかったのだ。 それを見た青年は満足げに言った。 「やはり今のゆっくり秘孔は声を上げられなくなる秘孔だったのか!感謝するぞ! お前のおかげで俺様の研究はまた一歩完成に近づいた!」 れいむには分からない。 なぜ自分がしゃべれないのか、この青年が自分に何をしたのか、なぜやさしいこの青年が集落をあんなことにしたのか。 ゆっくりの頭ではとても理解できない。 「さて、お前はもう用済みだな。この前発見した花火のように全身の餡子が爆発するゆっくり秘孔で葬ってやろう。 なあに、怖がることは無い。痛みを感じる暇すら無く一瞬で死ねる。」 ドス! 「!!!!!!」 診察室という名の研究室に爆音が響いた。 健康的な黒い髪を持つ青年の手の中でれいむはその派手にその生涯を閉じた。 かつて「奇跡のゆっくりプレイス」と呼ばれた集落はもうそこには無い。 そこにあるのはただ大量の、本当に大量のゆっくりの死骸のみ。 「ふう、時間はかかったが有意義な実験ができた。」 そう満足そうな顔でつぶやくのはこの集落に奇跡と地獄をもたらしたあの青年だ。 彼は元は加工所の研究者だった。 しかしゆっくり秘孔、ゆっくりの体に無数に存在する特殊な現象を引き起こす箇所の存在を発見し彼は変わった。 ゆっくり秘孔の実験と開発を繰り返すうちにそれに見入られ次々と、研究体以外の商品となるようなゆっくりをも殺した。 それが原因で彼は加工所をおわれたのだ。 職を失い研究環境を失った彼は浮浪者のように行く当ても無く森の中を彷徨った。 研究できないストレスで髪は白くなり栄養失中で頬がやせた。 そんな時発見したのがあのゆっくりの集落だった。 最初は治療の研究だけにしておこうと思っていた。 しかし彼のあふれる研究心は耐えられなかった、耐える気も無かった。 そうして生み出されたのが目の前の光景だ。 大量の餡子を前に、彼らに送る最後の言葉を彼はつぶやいた。 「俺の求めるゆっくり神拳はまだ遠い。」 彼は今日もどこかで自らが求める研究と拳法の完成めざしゆっくり達を付き続けている、かもしれない。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/399.html
物心が付いたときからまりさはずっと箱の中に居た。 本当に、箱の外の記憶は無かった。 広さはそれほどではないがそれなり歩き回れる程度の大きさはあった。 普通のゆっくりの巣に比べれば天井は大分高めだろうが広さだけとればそこまで大差は無い。 箱の中には何も無く、ただ定期的に餌が与えられるだけ。 まりさが思うに、生まれてからずっと箱の中に居たような気がする。 一度か二度だけ箱を引っ越したような覚えもある、しかし定かではなかった。 ひょっとしたら産まれてすぐに箱にでも入れられて ペットショップでバラ売りでもされていたのかもしれないが まりさにはそんなことはわかるはずもなかった。 わかるのはまりさが一人ぼっちだということだけである。 そしてまりさは一度も「ゆっくり」と言った覚えさえなかった。 生まれた時くらいは言ったのかもしれない。 だが記憶のある間では一度たりとも「ゆっくり」と言った経験はなかった。 そもそも何か喋ること自体が無かった。 言葉が喋れないわけではない。 ゆっくりは喋る力だけは生まれつき持っている。 だが話す相手が居ないのでは喋っても仕方が無いのだ。 箱の中はまりさの出す音以外物音一つしない。 ただただ静かなだけである。 それも気が狂いそうなほどにだ。 まりさはまだ若いゆっくりだが孤独に心を蝕まれて若々しい覇気とも無縁で暗くさび付いていた。 確かに箱の中にはゆっくりが生きるために必要なものは全て与えられていた。 しかし唯一つ、そこにはゆっくりだけがなかった。 ある時、いつもの時間に餌が与えられずに数時間まりさは放置された。 しかしまりさは別になんとも思わなかった。 そもそも時間の感覚が殆ど無く、ただ空腹を訴える体を不思議に感じていた。 そのままぼーっと空を眺めながらこのままこの感覚に飲み込まれて消えてしまいたいとまりさが思った時 ぶぅん、という不思議な音が耳をくすぐった。 「!?」 まりさは驚いたが、声は出なかった。 余りに長い間聞いたことの無い自分以外の出した音に、喋ることさえ忘れていた。 音のする方を振り向くと緑色をした細身の何かが居た。 逆三角形の頭の二つの角にギョロリとした大きな目が付いていてそれでまりさのことをじっと見つめていた。 胴体からはさらに細い棒が延びていて、一番上から伸びた太めの二つの棒は折れ曲がり 鋭く、何個も何個も棘が並んでいた。 ゆっくりしていない形だと直感的にまりさは思った。 動きもそうだ、二本の棒を擦り合せてくりくりと盛んに首を動かしながらも、目だけは絶対にこちらから視線をそらさない。 そのゆっくりしてなさが恐ろしかった。 「ゆ、ゆっく…ゆっくりして、いっ」 まりさは恐る恐る、その珍客に向かって挨拶をしようとした。 この言葉にどんな意味があるのか 使うべき機会も使ったことも無いまりさにはわかるわけも無い。 だがそれでもゆっくりの本能がそういえと言っていた。 まりさは頬が引き攣りながらも愛想笑いを浮かべようとした。 まりさの口許がぴくりと痙攣した瞬間、緑色のソレは動いた。 「ゆひいいいいいいいいいいいいい!?」 まりさは産まれてから一番大きな悲鳴を上げた。 緑色のソレは背中の薄い板を広げたかと思うと一瞬でまりさの頭の上に乗っかり、肩から伸びた棒をまりさに添え力を入れた。 棒から伸びる鋭い棘が突き刺さり、触れた部分をズタズタにしていく。 初めて感じる痛みにまりさは狂乱し、体を揺すって振り払おうとしたが 強い力で押さえつけられその棒がしっかり皮に食い込んでまるで外れない。 だが皮に噛み付かれて切り裂かれる音を聞きながら、それが恐ろしくて仕方ないのに どこかどうでもいいと感じる自分もいるのをまりさは感じた。 このまま食べられて死んでしまうんだというのを受け入れているまりさがまりさの中に居た。 このまま消えてしまおう、とまりさは思った。 こんな時、他のゆっくりならこういうんだろう。 「もっとゆっくりしたかったよ」 と だがまりさはこう呟いた。 「ゆっくりしてみたかったよ…」 心の底から漏れた呟きだった。 まりさは目を瞑り力を抜いて緑色の何かに身を委ねようとした。 「がんばれ!!」 その時、頭にくっついた虫よりもさらに上の方から声がした。 まりさははっと目を見開いて天井を見上げる。 さっきのような音ではなく、確かに意味を持った声だった。 「ゆ…!?ゆ…!?」 まりさは必死に声の主を探した。 箱の天井の向うに、見たことの無い何かが居るのをまりさは確かに見つけた。 「がんばれ!いくのよ!」 言葉の意味はなんとなくわかった。 それは確か相手を応援するための言葉だった。 呆然とそれを見つめているまりさに それまで忘れていた饅頭皮を棘の並ぶ棒で切り裂かれる痛みが現実感を伴って蘇った。 「ゆ、ゆがああああああああああ!!!!!!!!」 まりさは体を無我夢中で動かして箱の中を暴れまわった。 このまま死んでしまいたくなかった。 声の主と話をしたかった。 まりさは産まれて初めて必死になった。 体を打ち付けすぎて逆に傷口から餡子が漏れるほど激しく箱の中を転がった。 気付いた時、緑のソレはバラバラになって潰れていた。 体の一部は体液を垂れ流してまりさにべったりとへばり付いたままだった。 「あ…あ…!ゆ、ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 はっと我に返ってまりさは慌てて天井を見上げてゆっくりしていってね!と繰り返した。 まりさが初めて心の底からゆっくりしていってね!といえたのがその時だった。 しかしまりさが箱の上を見てもどこにもさっきの人影は見当たらなかった。 まりさはがっくりと肩を落として愕然と壁にもたれかかってぜぇぜぇと息を吐いた。 全身が疲れきっていたが瞳だけは未だに興奮冷めやらずに見開かれていた。 それから、まりさはずっと待っていても餌がいつもの様に与えられないので 空腹で空腹で、耐えかねて遂に恐る恐るバラバラに潰れた緑のソレに舌を這わせてみた。 ぺろり、と舐めるとそれまでの餌とはまるで違う、えぐみや苦味の強い感覚が舌を刺激した。 「はっ…ふっ…」 まりさはそれに怯えながらも、耐え難い渇きを感じついに緑のソレの残骸を口に放り込んだ。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~~♪♪♪」 うまかった。 胸のの奥深くからしあわせという言葉が湧き出して口からこぼれた。 無我夢中でバリバリグチャグチャと音を立てながらひとかけらも残さずに緑のソレを食べつくした。 まりさは興奮覚めやらぬまま、ぼーっと天井を見つめた。 ひょっとしたらあの時の人影がまた現れるかもしれないからだ。 まりさは自分と世界が確かに変わっていく感覚に、夜も眠れなかった。 次の日、また餌の時間には箱の中に珍客が現れた。 昨日と同じ、緑色のソレである。 まりさが警戒を怠らないように、ちらりと上を見ると確かに昨日の人影が見えた。 箱はすりガラスのようにざらざらした素材で出来ていて向うを完全に見ることは出来ないが 確かに誰かが箱の壁の向うに存在した。 まりさは今相対する緑のソレ以上にその存在に対して興奮した。 「ゆ、ゆっくりしてい」 「ぼーっとしてないで行った行った!」 まりさの言葉をさえぎってその人影から発せられた声に一瞬考えこんだ後はっとしてまりさは目の前を見た。 緑色のソレが羽を広げ、視界一杯にその逆三角形の顔を突きつけていた。 「ゆぎゃっ!?」 鋭い棒がまりさのおでこの両側を捕らえ、逆三角形の頭から生える牙が蠢きながら眉間に齧りついた。 「ゆぎぎぎぎぎ…!」 皮を切り裂かれる痛みにまりさはうめき声をあげたが、その実内心冷静だった。 そう慌てることは無い。 昨日と同じように壁に叩きつければ勝てるのだ。 まりさは痛みを堪えて、壁に向かって突進した。 「危ない!」 上方から悲鳴にも似た甲高い声が飛び出す。 ドンっ、と壁に頭をぶつけてふらふらとしながらもまりさは上に居る人影に笑みを返して安心させようとした。 その時、ブスリと何かがまりさの背中に突き刺さった。 「ゆびゃっ!?」 予想だにしない痛みにまりさは驚き、後ろを振りかえった。 しかし後ろに居るはずの何かはまりさに何かを突き刺しまりさを捕らえたままで後ろについて動いた。 「ゆぐっ、ぐうううう!」 まりさは今度こそと思って背中から壁に突っ込んだ。 ドシン、と音がすると同時に今とさっき、何が起こったのかを悟る。 頭上でぶうんと音がすると同時にまりさの目の前に緑色のソレは降り立った。 目を丸くするまりさに対して振り返り、鋭いその棒を振り下ろして頬を並んだ棘が裂いた。 「ゆぎっ…!」 餡子こそ出ないものの、斬られて数瞬してからゆっくり、かつ鋭くやってくる痛みにまりさは顔を歪めた。 まりさが驚きでじっとして居ると次々と鋭い棒が振り下ろされる。 再びあの棒で捕らえられるのを恐れまりさは後ろへと飛び跳ねるが緑のソレはそれ以上のスピードでまりさに襲い掛かる。 まりさのやわらかい饅頭皮はその棒が掠るだけで容易に、惨たらしくその表面を切り裂かれていった。 「恐ろしいまでの切れ味の鎌ね!」 ああ、この鋭い棒は鎌というのか… そんなことを思いながらまりさは彼女の声を聞いて昨日、初めてゆっくりしていってね!と言った時のことを思い出した。 思えば、あの時の自分のゆっくりしていってね!、はちゃんと彼女に届いたのだろうか。 声を発した時には、既に彼女の姿は無かった。 きっと届いていない。 ならあの「ゆっくりしていってね!」は独り言のようなものだ。 それで本当にゆっくりしたと言えるのだろうか。 きっと違う、とまりさは思った。 「ま゛だま゛り゛さ゛は゛ゆ゛っく゛り゛し゛て゛な゛い゛のおおおおおおおおおおおおおお!!!」 腹の底から、本当に心を込めた雄たけびが箱の中に響き渡った。 ずっと一人でゆっくりせずに居た自分が、彼女と言葉を通わせて初めてゆっくりすることの片鱗を見たのだ。 あと少しでゆっくりできるに違いないという確信がまりさの中にあった。 彼女と一緒ならきっとゆっくりできる。 彼女に自分のゆっくりを聞いて欲しい。 まりさもゆっくりしてみたい。 だからここで死ぬのは絶対に嫌だった。 ここで死んでしまったらゆっくりには届かず孤独なまま死ぬのだ。 そして傷だらけの体でまりさは飛び上がった。 実際にはそれほど大きなジャンプでもなかったがまりさにとっては空を飛ぶかのように大きな意味を持ったジャンプだった。 緑色のソレは羽を広げ飛翔し、それまでと同じように回避しようとする。 が、飛び上がった瞬間まりさの足にぶつかり、そのまま踏み潰された。 べちゃりという深いな感覚を足に感じまりさははっとしてあたりを見回す。 緑のソレはどこにもおらず、確かにこの下で潰れていることがわかった。 安全を確認し慌ててまりさは天井を見上げて彼女に向かって叫んだ。 「おねえさん!ゆっくりしていってね!!」 彼女は既に背を向けて立ち去ろうとしていたが、今度こそ確かに彼女に伝わったはずとまりさは思った。 鎌で惨たらしく切り裂かれズタボロになった顔で、まりさは最高の笑顔を浮かべた。 その日、まりさは顔が痛くて仕方ないにも関わらずに最高にゆっくりした気持ちで眠りについた。 朝起きて、まず上を見上げた。 あの人影は無かった。 しかし餌の時間に必ず姿を現すことを信じてまりさはわくわくしながら待っていた。 餌との戦いは命がけだが二戦連続で物にして相手を喰らったことがまりさに自信をつけていた。 傷もまだ治りきらず、動けば痛みが走るが負ける気はしなかった。 そして、衝撃で傷口から餡子が噴出してしまうほど何度もジャンプして緑のソレを踏み潰すことに成功した。 途中、餡子が噴出す痛みにくじけそうになったが例の人影から「その調子!」との声援を受けてなんとか自分の戦法を信じて頑張ることが出来た。 彼女の声援が無ければきっとまりさはくじけて自分を信じられなくなり負けてしまっていただろう。 まりさはこれまでの感謝の思いを込めて彼女に「ゆっくりしていってね!」と言った。 それから一週間ほど経った。 まりさは毎日ゆっくり眠って体を休め、朝起きるとすぐに天井を見上げて彼女の姿を探すのが日課になっていた。 初めてゆっくりしていってね!と言ったときから、彼女の存在はまりさにとって生きる支えとなった。 彼女と接して初めてゆっくりするということを学んだまりさにはもはや彼女無しの生活は考えられないようになったのだ。 彼女という存在があって、初めてまりさはそれまで重く圧し掛かっていた孤独というゆっくりしていない事象から開放された。 まりさのゆっくりは彼女による、彼女のためのゆっくりとなった。 まりさは彼女のことが好きで好きで仕方が無かった。 だから、毎日のように行われる戦いも、彼女の声援を受けられるのならば恐ろしくない むしろ楽しみなくらいだった。 彼女が戦いの際、声援を送ってくれるなら必ずそれに応えようとまりさは奮闘した。 彼女ともっと親しくなり、ゆっくりしたい。 彼女と心を通わせ、ゆっくりしたい。 そのために、生きて生きて彼女にゆっくりしていってね!と呼びかけ続けること。 それがまりさの今の生きる目標だった。 戦い、彼女の声援に応え勝利を手に彼女に「ゆっくりしていってね!」と 声をかける時に、まりさに最高のゆっくりを感じていた。 これこそ生きる、ゆっくりするということだとまりさは思った。 今日も、まりさの箱に珍客が放り込まれた。 それを見てまりさは緊迫して相手を凝視した。 それまでの緑の相手とは違い今度は黒く、短く、そして太かった。 その黒さにまりさは目を奪われた。 自分が身にまとっている大切な帽子と同じ色なのに 何故か禍々しさと恐怖を感じ、その存在感に威圧されてごくりと唾を飲んだ。 その顔つきの恐ろしさのためかもしれない。 まるで地獄の住人のような険しい表情を黒いソレはしていた。 相手の出方を伺い睨み合うこと数瞬。 黒いソレの恐ろしい表情を浮かべる顔から伸びる細い糸が ふわりと揺れたかと思うとキリッキリッ、と鋭い音がまりさの耳を劈いた。 びくりと体を震わせ一瞬視界から黒いソレが消えたかと思うとさっきと同じ鳴き声と そして何かを齧る音だけが箱の中に響き渡った。 「ゆ…ゆ…!?」 まりさは辺りを見回すが、箱の中はまるで何事も無かったかのように黒いソレが来る前となんら変わらない姿をしていた。 違うのはただあの黒い奴が発する鳴き声と何かを齧る音がまりさの耳に聞こえ続けている点のみである。 「ど、どおぢでなにもいないのにおとがきこえるのおおおおおおお!?」 箱中を見渡したが確かにさっきのは居ない。 しかし音だけは止まない。 齧る音が聞こえてもまりさに痛みは無かったがその止まない音の恐怖がまりさの心を蝕んだ。 「ゆうううう!ゆうううううううう!?」 恐怖にかられたまりさは箱の中を転がりまわった。 ごろごろと意味も無く箱の中を廻っている内に黒い黒いまりさのぽてんと帽子が落ちた。 流石にまりさも慌てて帽子を拾いなおそうとして、見つけた。 黒いソレはまりさの帽子をギチギチと顎を動かして齧っていた。 既に、小指が一本通る程度の小さな穴が開いていた。 「ま、ま゛り゛さ゛のだいじなぼう゛しにな゛に゛お゛ずる゛のおおおおおおおお!?」 まりさはこんな小手先で自分を騙していたことと大事な帽子に穴を開けられたことに激昂し それまでの恐怖も忘れて飛び上がって黒いソレを踏み潰そうとした。 その時、まりさは見た 黒いソレが自分より遥かに高く飛び上がる瞬間を。 「ゆぅ!?」 その跳躍の余りの高さにまりさは驚き、彼女の人影を探す以外の理由で初めて天を仰いだ。 黒いソレは帽子の上に突っ込んでしりもちをついているまりさの鼻先にどん、と飛び降りると ギチギチと顎を開いて鼻の頭に齧りついた。 「ゆぎぃ!!ゆぎゅぁああああああ!!」 慌ててまりさは転がって黒いソレを潰そうとするがそれよりも早く跳躍してまりさの間合いの外へと逃げ出した。 再びまりさが向き合うや否や、黒いソレの太く節くれだった足が爆ぜてて跳躍しまりさに飛び乗る。 そうしてまた同じようにまりさが振り払おうとすると傷を負うより早く黒いソレは飛び跳ねてまりさの手からするりと逃れた。 「も゛う゛や゛べでえ゛えええええ!だずげでぐだざいいいいいい!!」 完全なヒットアンドアウェイの前にまりさは何も出来ずに体中を齧られていく恐怖と痛みでぼろぼろと涙を流して命乞いをした。 「いいわよ!じっくりいきなさい!」 その時、天井の方からあの声がした。 それはまりさにとって天啓だった。 その声を聞くだけで、恐怖はすっと引いて行き、まりさは落ち着きを取り戻した。 痛みに歯を食いしばりながら 今、自分は相手の策に完全にはまっていることを認めて その突破口を探すために冷静に辺りを見回す。 とにかく突破口を見つけるまではじっくりといくしかないのだ。 「………ゆ!」 じっと黒いソレの攻撃に耐えながら、まりさははたとひらめき 帽子に向かって転がり走った。 黒いソレもまりさを追って跳躍する。 「ゆううううううううううん!!」 その瞬間をまりさは待っていた。 帽子を口に咥え、へこみの方を空高く跳ぶ相手に向かって突きつけた。 黒いソレはすっぽりと帽子の中にはまった。 「ゆっぎゅりゃあああああああ!」 確かな感触を感じてまりさはさっと帽子を地面に置いて黒いソレを捕らえた。 黒いソレが跳躍して、帽子にぶつかりぼとりと地面に跳ね返される音が中から聞こえてきた。 「そこでずっとゆっくりしていってね!」 まりさは力いっぱい優越感と憎しみを込めてそう言うと帽子に飛び乗った。 中に閉じ込められていた相手がぐちゃり、と潰れるのを帽子越しに感じて まりさは箱の向うの彼女を見て感謝の限りを込めていった 「ありがとうおねえさん!ゆっくりしていってね!!」 彼女はそう言い放つまりさを見つめて、背を向けてまたどこかへと去っていった。 それから一月ほどが経った。 その間まりさは毎日戦い、苦境に陥っても彼女の助言を頼りに勝ち続けた。 彼女の言葉を信じて戦うまりさは迷いが無く、実力を遥かに上回る力を発揮し続けた。 体の傷も増えて、その姿はまるで歴戦の勇士のようだった。 そしてまりさの彼女への想いも高まっていき、それはもはや信仰に近いものがあった。 あれからも彼女とまりさがまともに言葉を交わすことは無いが それでも戦いの間の彼女の声援と、去っていく彼女にかける「ゆっくりしていってね!」 を通してまりさは彼女と自分の心は通じ合っていると信じられた。 まりさはそのことが確かだと感じるだけでとてもゆっくりした。 まりさは彼女の存在があるおかげでこの生活が始まる以前の ただ箱の中にある餌を食べていただけのまるで生ける屍のような生活とはまるで違う 確かな彼女とのゆっくりを感じながら今を生きていた。 そんな幸せな日が変わることなく続いていったある日。 まりさの箱に緑色の例の相手が現れた。 「ゆふん」 まりさはそれを見て鼻で笑った。 ソレは最初に戦い、それからもう何度も打ち倒してきた相手と同じ種類のものだった。 多少、今までより体が大きいがなんら問題ない。 まりさは一刻も早くこの敵を打ち倒し彼女に「ゆっくりしていってね!」と言いたかった。 最初はまず睨み合い、緑のソレのギョロリとした目玉はもはやまりさに恐怖を感じさせるものではなくなっていた。 まりさはじりじりと必殺の跳び踏み潰しの間合いに緑のソレを入れようとにじり寄る。 緑のソレは野生の勘で危険を感じたのかそうはいくまいと後ずさるが、やがて箱の隅に追い詰められた。 「ゆっくり…しねぇ!」 まりさは緑のソレを完全に追い詰めると必勝を期して跳び踏み潰しを繰り出した。 勝利を確信してニヤリと笑った時、ブウンと激しい羽音が聞こえ、まりさの足元を涼やかな風が通り過ぎた。 「ゆ!?ゆっく…!」 ジャンプした隙に足元を通って後ろに廻られたまりさは慌てて後ろを振り向こうとした。 そと同じか否や、緑のソレがまりさの帽子に突っ込んだ。 「!?ゆっくらしてい」 緑のソレの体当たりで落ちた帽子がまりさの顔面に引っかかって視界をさえぎり、目の前が真っ暗になった。 必死に光を探して、帽子の中に差し込む小さな光に目をやっている最中まりさはギョロリと光るあの目と目が合った。 もはやまりさに恐怖を感じさせないはずの目は暗闇で薄く光り、それに見つめられてまりさは悲鳴を上げた。 度重なる戦いでまりさの帽子はところどころ穴だらけになり 緑のソレはその穴から体を入れて暗闇で唯一動いているのが見えたまりさの左目に喰らい付いた。 「ゆっびゃあああああああああああああああ!?!?!?」 まぶたは鎌に引っ掛けられて用を成さなくなり直接目玉にキバを立てられて穴が開いたまりさの目玉から中を満たしていた餡汁がどろりと垂れた。 「ゆひいい!ゆっぴいいいいいいいいい!!」 まりさは頭をぶんぶんと横に振り帽子を振り払った。 緑のソレも深追いをせずに鎌をはずして距離を取った。 「ま゛ぢざの゛お゛べべ…お゛べべがああ!!!」 まりさは左目からぬるりと流れ出る餡汁が頬を伝う悪寒に身をよじった。 目玉の中の体液と涙が交じり合って地面にこぼれた。 それを踏んだ感触でまりさはさらに混乱を酷くした。 それまでまりさの目に見えていた世界の半分に暗闇が満ちる。 勝利によりこれまで培ってきた自信は瞬く間に失われ、心の奥底からまりさは恐怖に支配された。 「ゆひっ…ゆひっ…」 まりさは狭くなった視界から緑のソレを逃すまいと必死に残った右目を動かすが 羽を持って飛びかうソレはまりさの視界から消えては現れ消えては現れた。 「ゆ…ゆっ…!」 まりさはすがるように天を仰いだ。 そこには彼女が固唾を呑んで見守っていた。 「ゆふぅー…ゆふぅー…」 彼女と緑のソレを交互に見ながらまりさは呼吸を落ち着けていった。 助言も、声援もなかった。 だがまりさにはわかった、彼女の期待が。 物言わぬその姿から確かに強い強い彼女の想いを感じ取ったのだ。 まりさはゆっくりと相手を見つめ、精神を集中した。 膠着状態の中じっと緑のソレと見詰め合った。 また恐怖は感じなくなっていた。 十秒か、一分か、五分か 二匹にとってとても長くて短い時間が流れ、ついに膠着が解かれた。 先に動いたのは緑のソレだった。 まりさはその飛ぶ勢い、方向を見て勝利を確信した。 「ゆっ!」 それを着地地点をそこから予測してそれ以上の高さでまりさは緑のソレの着地地点と思しき場所にとんだ。 箱の中のこの狭さでは一度跳んでしまえば殆ど方向転換する余地は無い。 落ちる速度を考えればもう一度ジャンプするより早くまりさの体が緑のソレを押しつぶすのは必定。 相手の後の先を突くまりさの完璧な勝利への作戦がそこにあった。 「ゆっくりつぶれてね!」 勝利を確信して飛んだ先にあったのは漆黒の三角形。 「ゆ!?」 さっき落としたまりさの帽子がその先にあった。 緑のソレはその頂点に足をつけると間髪居れずに方向転換して別の場所へと滑空していった。 足場さえあれば方向転換は容易である。 体の軽い緑のソレにとって帽子のとんがりは足場にするのに充分な強度を持っていた。 その時点で踏み潰すには若干まりさは高く跳びすぎていた。 まりさは再び自分の宝物である帽子に裏切られて泣きそうに顔を歪めながら呻いた。 「そ、そんな」 そして緑のソレを超える高さで限界まで飛び上がったまりさが着地した先にあったもの、それは 「ゆびゅぇええええええ!?」 着地の衝撃に耐え切れず傷つけられ抑えるものの無くなった眼窩から噴出す餡子と目玉だった。 「ゆぎいいいいいいいい!!!」 痛みと勝利の確信を打ち砕かれたことで狂いそうになりながらまりさは目を押さえようとした。 しかしまぶたはもはや用を成さないほどボロボロで余計に痛み、狂ったように身をよじるだけである。 「ゆっ?!どこにいったの!?」 痛みに狂いながらもはっとまりさは緑のソレが完全に視界から消えたことに気がついた。 「ゆっ!?ゆっ!?ゆっ!?ゆっ!?」 必死に相手を視界に捕捉しようとまりは辺りを見回した。 特に失った左の視界を補うよう右目を必死に左へ、左へと向けながら。 だから、右から襲い掛かる緑の鎌にギリギリまで気がつくことは無かった。 「……ぁ」 ぎょろりとした瞳、逆三角形の緑の頭 それがまりさがこの世で見た最後のものになった。 「や゛びゅぉお゛おお゛お゛お゛お゛おお゛お゛おおおお゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああ゛ああ゛あ!?」 痛みと悪寒と恐怖と暗闇に襲われてまりさは喉がはちきれそうになるほど悲鳴をあげた。 「や、べえ!ゆっぐ!ゆっぐぢぢでぇ!」 まりさの命乞いなど意にも介さずに、緑のソレは黙々とまりさの命を奪う作業を継続した。 まりさがいくら抵抗しようとも視界を完全に奪われたまりさに勝ち目はなかった。 次々と食い千切られ中の餡子を垂れ流す皮、引きちぎられ咀嚼される髪、頭を突っ込まれて中身を舐められていく眼窩 まりさを狂い死にそうになるくらい痛めつけるには充分すぎる蹂躙行為であった。 「ぁ…ぁ…ァ…ゅ…ゅっく…ぃ…」 そんな痛みと恐怖に苛まれた暗闇の中で、死を恐怖しながらもどこかまりさは晴れやかであった。 最初に緑のソレに殺されかけた時とはまったく別の感情がまりさの中に芽生えていた。 「ぉね…ぇさ…」 まりさは暗闇の中で彼女のことを想っていた。 自分をゆっくりさせてくれた彼女のことを。 彼女と出会えて、ゆっくりできたことを考えれば思っていたよりもずっと悔いは無かった。 彼女の期待に応えられなかったことだけが残念だったが、それでも自分は全力を尽くした。 そのことにまりさは悔いは無かった。 まりさをゆっくりさせてくれた彼女の期待を受けて戦えた一生にまりさは満足していた。 「やった…やった…!やったぁ!やったよ!あはは!やった!」 『ゆ…?や…った…?』 その時、暗闇の中のまりさに確かに彼女の声が聞こえてきた。 まりさはその言葉の意味を理解するのに長い時間を要した。 彼女が発する言葉はきっとまりさが負けたことによる悲しみか、失望か、怒りか そのいずれかの言葉を発するものだと信じきっていたからだ。 だから何故彼女がやった、と歓声をあげるのかまりさにはわからなかった。 「遂にやったよ!勝った!一対一でゆっくりに蟷螂が勝ったんだ!」 喜び勇むその声を聞くまりさにそっと彼女と思しき手が触れた。 そして彼女は蟷螂と呼ばれた緑のソレをそっとまりさから引き離した。 『ゆ・・・?あ、ありがとうおねえさん!ゆっくりしていってね!』 まりさはそれまでの彼女の言葉はひとまず忘れて助けてもらえたことを喋る余力が無いので心の中で感謝した。 「この美しさの欠片も無い憎たらしい饅頭頭に私の可愛い蟲達が負けてなんど苦渋を舐めたことかわからない」 『!? どおぢでぞんなごどいうのおおおおおお!?ま゛り゛ざはがわいいよおおおおお! ぞれにま゛り゛ざはお゛ね゛えざんのだめ゛にがんばっだん゛だよ゛お゛おおおお!?』 まりさは暗闇の中で突然自分を罵倒する彼女の言葉を、信じられないと悲鳴を上げた。 「でもそんな苦労も遂に報われるのよ あなたの子孫がどんどん増えて、この幻想郷を覆えばゆっくりより強い蟷螂が幻想郷の蟷螂になる! そんな蟲たちがもっと増えればゆっくりに怯えて暮らす必要も この幻想郷で、生態系の中で下に付くことも無い! 私の可愛い蟲達こそがゆっくりの捕食者となるのよ!」 しかし彼女の言葉はただひたすらにまりさを倒した蟷螂に対して向けられた。 『なにを…なにをいってるの…!?』 まりさには彼女が何故そんな恐ろしいことを言っているのかわからなかった。 彼女はまりさの勝利を願ってあの恐ろしい者達と戦わせ、応援していたはずなのだ。 なのに何故相手の勝利を喜び、笑い声を上げているのかわからなかった。 「ここでゆっくりを相手にした淘汰と 生き残った蟲同士での交配を繰り返して 私の可愛い蟲達はどんどん強くなってきてる この調子で行けばそのうち他の蟲達の中にもゆっくりより強い蟲が現れてくる! そしてその子達が繁殖すれば ぽっと出の新参の癖に幻想郷の中で私達より大きな顔してる あのゆっくり達より強くなれる!」 「そりゃあ世の中弱肉強食なんだから、私達蟲が弱いならゆっくりに食べられても仕方ない だったらゆっくりより強くなってやる! そう思って、みんなとここまで頑張ってきたのが遂に報われる!」 彼女が力強く放った言葉がまりさの耳に木霊する。 「ずっとこの日が来ると信じてたよ、私の可愛いあなた達 妖怪の私が手を出したら意味が無いから、一生懸命応援してたけどその甲斐があったわ!」 繰り返される蟲達への賛辞。 『あ…あ…』 ここまで話されればもうまりさにも理解できた。 彼女の気持ちは、一片たりともまりさになど向いていなかったのだ。 事情はよくわからない、だが少なくともまりさは彼女達がゆっくりに勝つための訓練道具でしかなかった。 戦いの最中で、彼女から降り注いでいると確かに感じたあの強い視線、声、想いは 全てまりさの相手の蟲達に注がれていた。 ならば、まりさの感じたゆっくりとはなんだったのか。 まりさは孤独に苛まれ続けてゆっくりできずに生きてきて 彼女と心を通わせることで初めてゆっくりできたと思った。 ならば本当は彼女と心が通じていなかったのなら まりさの想いがすべて独りよがりで、未だに孤独の中にいたのならば ゆっくりしたと思ってきたものは全て嘘のゆっくりだったのだ。 少なくともまりさはそう確信した。 例えそれまで感じたゆっくりが本当だったとしても 今ではそのゆっくりは嘘偽りとしかまりさにしか映らない。 まりさはゆっくりするということを誰からも学べなかったのだから。 彼女を中心に形作られていたまりさのアイデンティティは今この時崩壊した。 「今日は祝賀会ね、みんなを集めてあのゆっくりをたべるわよ!」 『や、やめてね…いや…いや…』 まりさの願いも空しく、何十、何百という羽音がまりさの耳に飛び込んだ。 『やべでええええええええ!』 ギチギチという音で蟲達が顎を蠢かせて獲物を見て舌なめずりをしているのがわかった。 『いやいやいやいやいやいやいやいやいやあああああああああああああああ! ま゛り゛さ゛は゛まだいちどもゆ゛っぐぢぢでな゛いの゛お゛お゛おおお!! ゆ゛っぐりぢないでぢぬ゛の゛なん゛て゛い゛や゛ああああああああああああああ!!! や゛べぅ゛う゛ぁ゛あ゛あ゛あ!!ごないで!ごないでむ゛じざんだぢ!!ごないでえええ!! お゛ね゛えざん!お゛ね゛えざんだずげで!いっじょにゆっぎりぢでええええええ! ゆ゛っぐりぃ!ゆ゛っぐりぃ!!どぼぢでま゛り゛ざはゆ゛っぐりでぎないのおおおお!? ほ゛ん゛と゛のゆ゛っぐりっでな゛んだの!?ゆ゛っぐり!ゆ゛っぐりじでいっでね! ゆ゛っぐりじでいっでね!?ゆ゛っぐりっでな゛に゛!?ゆ゛っぐりっでどん゛な゛ごどなの?! だれ゛でぼい゛いがらま゛り゛ざにゆっぐり゛を゛おぢえでよ!ゆ゛っぐり゛!ゆ゛っぐり゛ぃ! ゆ゛っく゛り゛ち゛た゛い゛!ゆ゛っく゛り゛ち゛た゛い゛ゆ゛っぐりぃ!ゆ゛っぐり゛ぃぃい゛!?』 まりさの心に瞬く間に後悔の念があふれ出した。 あと少しで触れられると思った、触れられたと信じたゆっくりを全て否定され ゆっくりを求めるまりさの想いはぐちゃぐちゃになって暴走し、生きてゆっくりしたいという強い渇望となった。 だがもはや喋ることのできないまりさの想いが誰かに届くことは無い。 無常にもまりさの体に蟲達が一斉に群がった。 『ま゛り゛さ゛も゛ゆ゛っ く゛り゛し゛て゛み゛た゛か゛っ た゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛』 ――――――……・・・ ある時から、ゆっくりの間でこんな噂が広まった。 『魔法の森の奥深くに おいしい花が美しく咲き乱れ 太陽は燦燦と降り注ぎ 小川はその光を照り返してやさしくせせらぐ 緑に溢れ夜もやさしい空気が安らかな眠りに誘う そこには争う者はおらず誰であろうともゆっくりできる そんなゆっくりプレイスがあるという その場所の名は 何度夜が来てもずっとゆっくりしていられる という意味を込めて 永夜緩居(えいやゆるい) と呼ばれていた』 この物語は永夜緩居を目指したゆっくりと蟲達の物語である。 永夜緩居― 第四話[ゆっくり]
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そのちびれいむは、ずっと妹が欲しかった。 親れいむが病弱であり、植物的出産でありながら自分一人しか茎から生えなかったため、仲のいい姉妹が欲しかったのだ。 他のゆっくり家族に可愛いちびゆっくりがいるのを、いつもうらやましそうに眺めていた。 だから、親れいむがもう一匹の赤ちゃんを茎で生やしたとき、とても嬉しかった。 これで自分にも妹ができる。たくさんかわいがって、たくさんゆっくりさせてあげたい。 そう思って、毎日赤ちゃんに声をかけ、ほっぺをすりすりしてあげていたのだ。 だが、その希望は呆気なく潰えてしまった。 早すぎた出産。まだ妹れいむが生れ落ちる準備もできていないのに、親の体調が急変し、未熟なまま妹れいむはこの世に産み落とされた。 地面を力強く蹴って元気に跳ねるための体は、表皮がしっかり作られていないので立つことはおろか動くことすらできず、ただぶよぶよと体を揺らすだけ。 輝きを湛え、姉としての自分の姿を映してくれる筈だった瞳は、どこにも焦点を合わせることなく虚空を彷徨っている。 おねえちゃん、と甘えた声を出してくれるのを期待していた口からは、「ゆっくりしていってね!」も聞くことが出来ず、 イビツで壊れた鳴き声しか聞こえてこない。 自分の思い描いていたそれとあまりにかけ離れた妹の姿を見ながら、れいむはゆっくりと理解した。 この子は、ゆっくりできない子なんだと。そして、元気に自分の後をついてくることはこの先ずっとできやしないのだと。 エサをれいむから口移しで食べさせられるまま、壊れたレコード盤のように変わらない鳴き声を繰り返すだけの妹に、 ちびれいむは今日もひっそりと涙するのである。 挿絵:【未熟児ゆっくり.jpg】 ちびゆっくりの人です。 そろそろ自分のHNも決めていい頃かなと思ったり(`・ω・´) とりあえず『クラムボン』でお願いしますー。 クラムボンの著作物一覧 ゆっくり一家と俺の冬 上下 ゆっくりゃたまねぎ責め あとちびゆっくりシリーズもろもろ このSSに感想を付ける
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美鈴のゆっくりお昼ご飯 「みーんみーん」 蝉の声が響き渡る。夏、真っ盛り。 ここ、幻想郷にも夏が来た。氷精がどっかで溶けてたりしそうなくらい熱い夏。 タライに水張って足を突っ込みながら将棋、としゃれ込みたいほどうだる暑さの中、門番は立っていた。 「暑い…」 流れる汗を手で拭う、人民服に紅い髪のスリットグラマー、その名はちゅうg「紅 美鈴!!!」 もとい。華人小娘、紅 美鈴である。紅魔館の門番にして武術の達人。 その名は、強さと親しみやすさから幻想郷の人間と妖怪に知れ渡っていた。中国として。 「なんだか失礼なことを言われたような気が…」 呟きながら、もう一度汗を拭う。ただいま時刻は午後二時。最も暑い時間帯である。 そんな時間に日影はないわ湖の照り返しがきっついわ館の紅が目に悪いわするところにいたら汗もかく。 「暑い暑い暑い暑い……」 武術の達人は汗を流れる量をコントロールできると言う。暑さ寒さもへっちゃらだともいう。 しかし、美鈴は武術の達人ではあっても、今はむっちゃだれていた。 ぶっちゃけていうとやる気があんまりなかった。 理由は二つ。暑くてシエスタもできないから。お腹すいたから。 普段住み暮らしているめーりんハウス(真紅のテント)は、この時間だと中は地獄のような暑さになっているだろう。 昼寝なんてしたらメイド長に刺し殺されるか、妖怪に寝首を掻かれる前に干からびる。 そこいらで寝るのもダメだった。一度夏に横になって寝たら、身体の右側だけに日焼けの後がばっちりついて恥ずかしい思いをしたからだ。 日焼け跡は、秋になるまで消えなかった。 そして、もう二時を回ろうか、と言うのに、お昼ごはんを食べていない。 普段はメイド長がじきじきに持ってきてくださる。シエスタしていないかの監視の意味も含めて。 しかし、今日はメイド長はいない。ここ紅魔館の主、レミリアのお供をして博麗神社に行っているのだ。 そういうことはよくある。そして、メイド長がいない時は妖精メイドが美鈴の食事の用意をしてくれるはずなのだが…。 気まぐれで、美鈴以上にやる気のない妖精メイドにそんなもの期待しても無駄、というものだ。 咲夜がいないときは、美鈴は常にすきっ腹を抱えることになる。 「おなかすいたー…」 何度目かの虚しい呟きを繰り返す。気を紛らわそうにも、一人○×も一人しりとりも、もう飽き飽きしていた。 暇つぶしに大図書館の本を借り出そうとしたこともあったが 「夏は本が日焼けするからダメ」 という、図書館の主の一言によってあっさり拒絶された。 太極拳もお腹がすいた時にはやりたくない。 そう、美鈴は暇だった。 「だれか襲撃でもこないかなー…黒いのでもいいから…」 しかし、美鈴の物騒な希望はかなえられない。黒いのこと普通の魔法使いは客として既に図書館にいりびたっているからだ。 風もまったく吹かない、じめっとした幻想郷の夏の午後。 暇なときは、門番はひたすら暇だった。 見飽きた光景をなんか面白いものないかな、と半ば諦めの境地で見やったとき、珍しいものを見かけた。 「ゆっ!ゆっ!」 ゆっくり霊夢の家族だ。 ここ紅魔館の周りにはゆっくりれみりゃやゆっくりフランなど、ゆっくりの捕食者たちが数多く生息している。 普通の、よわっちいゆっくりはとっくに食い尽くされたものだと思っていたのだが… 「珍しいこともあったもんだ」 と、ぼそりと呟くと、先頭のゆっくり霊夢がその声を聞きつけたらしい。 「ゆっくりしていってね!!」 お決まりの台詞を叫ぶ。 「はいはい、ゆっくりしてますよー」 よい暇つぶしが出来た、と笑顔で近づく美鈴。その答えを聞いて、ゆっくり霊夢たちが嬉しそうに叫び返す。 「「「おねえさん、ゆっくりしてるひと?!」」」 「そうだよ、ゆっくりしてるよ。」 こいつら、もっと静かにしゃべれないのかなー、とか考えながら答えてやる。 「じゃあ、いっしょにゆっくりしよう!」「あのおうちはれいむたちのおうちなの!」「ゆっくりできるよ!!」 超☆喜んでいる。単純なもんだ。ぴょんぴょん飛び跳ねている…ん?おのおうち? 「ねえ、あなたたち。お家ってどこにあるの?」 「そこだよ!」 と一番ちいさなゆっくりが紅魔館を見ながら飛び跳ねる。 ああ、やっぱり。 こんなのが襲撃者か…と内心ため息を吐きながら説得を試みる。 「あのね、あなたたち…」 「おねえさんはゆっくりできるひと!!」「いっしょにゆっくりさせてあげるよ!!」「れいむたちのおうちでゆっくりしよう!!」 「だから、あそこはレミリアさm」 「きっとたくさんおいしいものがあるよ!!」「ゆっくりできるよ!!」「ゆっくりさてやるからありがたくおもってね!!」 「あそこはあなたたちのいえじゃないと…」 「「「ゆっくりできるよーーーー!!!」」」 美鈴の言葉はゆっくりたちの叫びの前に完全にかき消された。 「ゆっくり!!」「ゆっくりぽいんとだー!!」「れいむがいちばんゆっくりできんだーーー!!」 などと口々に勝手なことをほざきながら紅魔館に向かって行進し始める。 その瞬間、美鈴の怒りは簡単に有頂天に達した。暑くて空腹で堪忍袋の緒はゆるゆるだったのだ。 丹田に気を込め、一気に発声!! 「やかましいっっっっっっ!!!!!」 この一声でゆくっりたちはすべて目を回した。夜雀を声だけで叩き落した美鈴の複式発声法、伊達ではない。 「はあ、結局暇つぶしにもならなかった…」 スカートの前側を持ち上げて、そこにゆっくりを乗せていく。素晴らしき哉、脚線美。 「大声だしたから余計お腹が…」 そこではたと気付く。こいつら食えるじゃん、と。美鈴は、さっきと打って変わった軽い足取りでめーりんハウスへと向かった。 「フンフン♪」 地獄のように熱く真紅に染まっためーりんハウスの中で、なにやらごそごそ探している。 「どこかの巫女じゃないけど、やっぱり饅頭にはお茶がないと…」 どうやらここでお茶を入れたりもしているようだ。不憫。 外に出て、お茶が沸くまで正座で待つことしばし。 ちょっと補強したみかん箱の上にゆっくりをならべ、いただきます。 ゆっくりどもはまだ気絶している。気絶したまま食われたほうが幸せなのかも知れないが。 美鈴は行儀悪く、どれから食べようか迷ったあと、一番小さなゆっくりを掴んで、一口で食べた。 口の中でかすかな悲鳴が聞こえたような気もする。 「うーん、甘くておいしい…」 あまり甘いものが好きではないが、空腹は最高のスパイスだ。そして久々の甘味。おいしくないほうがどうかしている。 次のちびドマンジュウも一口。口の中に広がる甘さ、出涸らしの番茶とあいまって、美鈴を至福の時への誘った。 そしてもう一つ。一口で食べるには大きかったので、かじる。 「ゆ゛っ?!」 あ、起きた。寝てたほうが幸せなのに、と思ったが、構わず食べ続ける。 「いだいいいいいい?!!」 「あ、こら、手の中であばれるんじゃない…あ。」 ぽとり。あんまり暴れるので手からこぼれて地面に落ちる食いかけのゆっくり。 露出していた餡子が衝撃ですべて飛び出る。それがトドメになったらしく「ぎっ?!」と叫んで動きが止まる。 「あーあ、もったいない…」 さすがに落ちたものを食べる気にはなれない。蟻に寄付しようと思い直して次に取り掛かる。 どいつもこいつも、一口食われた瞬間に目覚めていきなり叫びだす。 「妹様なら断末魔もお喜びになるんだろけど、私にはそんな趣味はなー…」 ぼやきながらも次々に平らげていく。同族が食われて悲鳴を上げているというのに、他のゆっくりどもは目を回したままだ。 薄情なのか美鈴の声がそれほどすごかったのか、どちらなのか。 そしてちびゆっくりをすべて食べ終えたとき、美鈴はぽつりと呟いた。 「…飽きた…」 いくら久しぶりの甘味とはいえ、饅頭を腹いっぱい食べれるものではない。基本的に美鈴は辛党なのだ。 しかし空腹はまだ収まらない。さりとてこれ以上ドマンジュウを食べる気にはならない。 のこったれいむをどうしたものか、と思案していると、 「うー!うー!」 よたよたとこちらに寄ってくる影が一つ。 紅魔館の主、レミリア…にそっくりなゆっくりだ。 顔だけのときは日光で死んでしまうが、胴体が生えると日光の中でも活動できるようになる。 というより胴体の生える種類はゆっくりれみりゃとゆっくりフランしかいない。生命の神秘である。 だが美鈴の頭の中にあったのは、生命の神秘への遥かなる探究心ではなかった。 「こいち、確か中身肉まんだったよね?」 という食欲100パーセントな考えだった。 甘ったるいドマンジュウの口直しにはちょうど良い。確か家の中に醤があったはずだ。それで味付けして食べてしまおう。 そう考えるとよだれが出そうだった。 「うー!うー!」 どうやら美鈴が捕まえたゆっくりれいむ目当てに出てきたらしい。 調理道具を持ち出す時間稼ぎのため、母ゆっくりれいむを投げつけてやる。 「ゆ?」 その衝撃で意識を取り戻すれいむ。目の前にはれみりゃがいた。 「ゆぎゃあああああああ?!」 目を血走らせ歯茎をむき出しにした顔で叫ぶれいむ。必死で命乞いをする。 「れいむをたべてもおいしくないよ!!ゆっくりできなくなるよ!!」 捕食主のれみりゃがそんなもの聞くわけがない。 「うー!うー!」 右手で髪を掴み持ち上げ、空いた左手で頬を思いっきり引っ張る。 「ゆーーー?!い゛や゛だぁぁぁぁぁぁ!?いだいいいいいい?!」 痛みに泣き叫ぶれいむと、その反応を楽しむように徐々に力を込めるれみりゃ。 ぶち。 「ゆ゛ーーーー?!」 引きちぎった皮を食べ、露出した餡子に喰らいつき、餡子をゆっくりと吸い出していく。 「うま^^!うま^^!」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ!?」 餡子を吸い出され、痙攣する。生きながら脳を吸い取られるようなものだ。 れいむの目がぐりんと白目を向く。 餡子を2割程―れいむが死なないギリギリのラインだ―吸い取ったところで、今度は一気にかぶりつく。 「ゆぐぎゃああああっ?!」 痛みに意識を無理やり引き戻される。 「うー!うー!」 れみりゃはれいむの反応を楽しんでいるようだ。なるべく残酷に、なるべく苦しむように捕食している。 「うはー、レミリアさまと同じでどSなんだな、ゆっくりも…」 中華鍋を火にかけ、準備完了した美鈴があきれたように呟く。ちなみに火は気を掌に集中、発熱させて木を燃やして起こした。 「ゆ゛………っぐ…り゛……」 れいむはからだの半分ほどを食べられたところで息絶えた。 「うーーー!!」 死んだことに気がついたれみりゃは、子供が飽きたおもちゃを捨てるように投げ捨て、 「ぎゃおーーーー!たべちゃうぞーーー!!」 残ったゆっくりれいむのほうによたよた歩み寄ってきた。 「食べ残すなんてゆっくりの分際でぜいたくな…」 自分がれいむを食べ残したことを棚に上げて憤る、が気を取り直して、 「れみりゃー?れいむりおいしくてゆっくり出来る食べ物があるんだけど?」 慣れない猫なで声で呼び寄せる。 「うーー?おかし?くっきーー?!」 妖精メイドたちが甘やかしてお菓子で餌付けしたりするもんだから、口が肥えている。生意気、と美鈴はさらに苛立つ。 「もっとおいしいものよ?」 私にとってはね、と口の中で付け足す。美鈴が手に持っているものは醤。豆板醤の瓶だ。 「おかしーーーーー!うー!うー!」 みょうちきりんな踊りを踊りながらもたもた近づいてくる。 残っていた何匹かのゆっくりれいむは既に逃げ出していたが、美鈴もれみりゃも気にしていなかった。もっとおいしそうなものが目の前にあるのだから。 「おかしーーーー…?」 美鈴の持った瓶を見たれみりゃの顔が曇る。当然ながらクッキーやケーキには見えない。 「うーーー!!」 美鈴の手から瓶を叩き落とす。 「やだやだやだやだ!!!くっきーじゃなきゃだめーーー!!くっきーたべうーー!うー!」 地面に寝そべって駄々をこね始める。この甘えた根性は妖精メイドたちが甘やかしたせいらしい。 美鈴は慌てず騒がず瓶を拾い上げ、れみりゃの顎を掴み、瓶の中身を口の中に流し込んだ。 「う゛ゆ゛ーーーーー?!」 れみりゃは顔を真っ赤にして暴れる…暴れようとするが美鈴ががっちり顎と間接をホールドしているので、身動きすらも出来ない。 「うー?!う゛ーーーー?!」 「はいはい、おとなしくしてねー」 抑えるのも面倒になったので、浸透剄を叩き込んで無理やり黙らせる。 もう一発。さらにもう一発。とどめにもう一発。これで醤と肉まんがうまく混ざり合ったはず。 「さ、本日のメインディッシュと参りましょうか!!」 中華鍋が充分熱されているのを確認する。それから、逃げられないように羽、手足を引きちぎる。 気絶したれみりゃの身体が痛みに反応して痙攣するが目は覚まさない。 ちぎった羽と手足はもちろん捨てたりはしない。これは後から素材そのままの味でいただくのだ。 「えいっ!」 手足と羽をもがれて達磨みたくなったれみりゃを鍋に放り込む。油がはねる。熱さに起きた達磨がのた打ち回る。 「うーーー!!ううーーーー!!あづーーーい!!」 「まずは表皮をこんがりと…!!」 悲鳴を無視して料理に集中する。半年振りの肉なのだ。気合が入るのも当然と言えよう。 れみりゃは必死で身体を動かして鍋から逃げ出そうとする。しかし油ですべってうまく動けないうえに、端に来たと思ったら鍋を振られて中央に戻されてしまう。 さっきまでおいしいれいむを食べていたのに、何故こんな目に遭うのか分からなかった。 身体の外が熱い。身体の中が熱い。身体の中をかき回されたように痛い、生えてくるはずの手足が生えてこない。 「うーーー!!うーーーー!!ゆ゛っぐり゛じだいいいいいいい!!」 もう、ゆっくりできないのだろう。何が起こったかはわからなかったが、それだけは分かった。 れみりゃは、絶望のなかで焼け死んだ。 そんなれみりゃの絶望なんか知ったこっちゃない美鈴は、久々の中華の火力にハイになっていた。 「料理は愛情、中華は火力!!まだまだ火力がたりなぁい!!」 手に気を集中、鍋にダイレクトに熱を伝える。一気に火力が上がる。肉がはぜる音が激しくなっていく。 「燃えてる燃えてるハラショーー!!アイヤーー!!」 テンションが上がりすぎてお国言葉が出だした。 吹き出る汗、張り付くチャイナ。大変艶かしい。 最後の仕上げとばかりにもう一振り醤を加え、馴染ませるために鍋を思いっきり振る。 「あれ?」 突然手が軽くなる。赤熱して引きちぎれた鍋の取っ手しか手元にはない。 何が起こったか瞬時に理解する。が、どうしようもない。 「あ、ああああ?!」 美鈴のくびきから逃れた鍋は慣性の法則に則り、放物線を描いて…紅魔館の少ない窓の一つにジャストミートした。 その日の夜。もちろん美鈴は晩ご飯抜きだった。れみりゃの残りすらも取り上げられ、すきっ腹で門番を続けている。 ゆっくりを食べようとした結果がこれだよ!!
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一応幻想郷設定 fuku6447、ゆっくり考察体験の続きに当たります ゆっくり希少種・その独自解釈あり 優遇されるゆっくりとそうでないゆっくりが出ます 漫画パロ多数につき注意 村の外れにある一軒家。 その中で二人の男が談笑していた。ゆっくりに興味を持った男である。 もう一人の男はいわゆるゆっくりの虐待お兄さん。 ゆっくりに好奇心を抱いた彼は、昔の友人が虐待お兄さんになっていた事を思い出し訪ねた。 突然の訪問であったが、友人は彼を歓迎した。 相手が害獣同然の存在とはいえ、虐待という悪趣味な行為に嫌悪感を抱く人間がいるのは無理も無い。 友人もそれを認識して、趣味を前面には出さずあまり人とは関わらないようにしていた。 方向性は違えどゆっくりに関して共通の趣味を持つ者同士。 彼らは大いに語り笑いあった。話題が虐待話になるのは虐待お兄さんらしいと言えるが。 「なあ好奇心で聞くんだが…」 男は友人に問いかける。 「君が見てきた中で最も頭が悪いゆっくりって…何だい? 君の家に侵入してきたゆっくりでもいいし…外で見かけたゆっくりでもいい…」 「れいむにはれいむの頭の足りなさが…まりさにはまりさの…浅はかさがある。 ゆっくりに一概にどれが頭が悪いとは言いがたい」 「質問が悪かった…幻想郷の彼女らのファンが遊びで話す 『境界の隙間妖怪と外から来た山の神はどっちが強い?』そのレベルでいいよ」 「…『ちるの』と呼ばれるゆっくりが最も頭が悪い。 ただしゆっくりの多数決に基づくがね」 「『ちるの』…名前もバカそうだな」 「どのゆっくりも馬鹿と認識している事が理由さ。どれに尋ねても⑨と言うんだぜ。 そもそも連中の言うレベルの馬鹿だからどう頭が悪いのかわからんがね」 「それ…どこに棲んでるんだ?」 「見てみたいという事か?オリジナル同様紅魔舘周辺の湖に住んでいるらしい。 危険な場所だからな、あまり勧めないぞ」 こうして男は紅魔舘の湖にやって来た。あの悪魔の棲む紅魔舘に加え 強力で好戦的な妖精もいるらしい。ハッキリ言って危険な場所だ。 好奇心とは恐いものだと我ながら思った。 周囲を見回してみると至る所にゆっくりが見受けられる。 人があまり立ち入らない場所だからなのか、人の影響は薄い様だ。 なるほど人里でよく見かける様なゲス個体の匂いがしない。 「ゆっ?おにいさんはゆっくりできるひと?」 気がつくと好奇心旺盛な個体がいたのか、れいむ種に声をかけられた。 「悪いがオレはゆっくりできる人間じゃない… 向こうへ行け…蹴り殺すぞ」 「ゆっ!?ゆっくりできないのはいやだよ!!」 慌てて足元のれいむ種は逃げていった。 ゆっくりと馴れ合うために男は来たのではない。 それに野生のゆっくりに触れる者としてモラルは守らなくてはならない。 野生動物同様、無闇に人間に慣れて警戒心を失った個体がゲス化するのである。 ある程度恐怖心を持っていた方が人間にもゆっくりにとっても望ましい。 男は目的を思い出し、湖のほとりに歩いていった。 約一時間程辺りを探し回った、その時だった。 「うん?」 ふと見ると水辺で、見た事もないゆっくりがいた。 青い髪でリボンをつけ、背中には氷の羽根の様なものがついている。 「(あれか?)」 茂みに姿を隠しながら静かに近づいていく。そうして完全に視界に捉えた瞬間だった。 「(ウォッ…これは…)」 確かに目の前のゆっくりは探していたちるのの様だった。 外見はなるほど、オリジナルの氷の妖精に似ている。髪や飾りなどは。 しかし顔を見てみると、焦点がどこかも定まらない生気の無い目でいわゆるレイプ目に見えた。 おまけに口はだらしなく半開きになっていて端からは涎が垂れている。 これは馬鹿というレベルではない。知能があるかも疑わしい様な外見だ。 男はちるのが馬鹿と呼ばれる理由がわかった気がした。 「(あいつ、見えているのか?)」 男は歩いて近づいてみる事にした。背後から歩いてはいるものの、 全くこちらに気付くそぶりが微塵も感じられない。 手で触れられるその距離まで近づいても、結局ちるのは男に気付く事はなかった。 「おい」 「………」 「ゆっくりしていってね!!!」 「………」 ちるのは無言だった。ゆっくりにおける大切な挨拶であるはずのゆっくりしていってね、にも反応しない。 こいつ、喋れないのか?男はそんな気すらしていたのだった。 指でちるのをつつきながら考える。これだけやっても無反応だ。 つつく力を強くしたところでようやくちるのは反応した。 「………」 こちらを向いた。視線をこちらに向けたままそのまま数秒間固まったまま動かない。 …こいつ、襲われたらどうするんだ? 拳でポンポンと叩いても逃げるそぶりを見せない。ならば仕方ない。 「ヒャア!我慢できねえ!虐待だぁ!!」 腕を振り上げ、思い切り脅かしてみる。 「!!!」 ようやくちるのは驚いた顔を浮かべ、ポンポンと跳ねながら逃げていく。 水面に浮かぶ大きな蓮の葉を跳ね、ピタリと止まった。 なるほど、蓮の葉の上では体重の関係で人間は追跡できない。少しは頭があるようだ。 ただのバカではないらしい。男は隠れて、ちるのを観察してみる事にした。 「(見事なまでに何もしてないな…)」 茂みから観察を開始してから数十分が経っていた。 相変わらずちるのは虚空を見つめながら突っ立っている。 ちるのの前をカエルが横切ったその時だった。男はちるのの珍行動を目の当たりにする。 「!?…あいつ何か吐いたぞ!?」 ちるのの目の前にはかき氷のようなもので絡め取られ、冷たさで身動きできなくなっているカエルがいた。 そのカエルをちるのはすかさず口の中に入れ、飲み込んでしまった。 青い色をしたかき氷。恐らくちるのの中身は冷たいかき氷で構成されているのだろう。 味は多分ブルーハワイだ。それを口から吐き出して獲物を捕らえる手段にしているのか。 今までボーッとしていたのは獲物を待っていたからか? …いや、ただ単に突っ立っていただけかもしれないな…そんな事を男は考えた。 今度は水の中に浮かんでいる藻や水草を食べている。終始無言だった。 ゆっくりが言うような「むーしゃむーしゃ」も「しあわせー」も無い。 男は何か閃いたようで、茂みからあるものを放り投げた。 ここに来る途中で見つけたゆっくりの死骸。その中身の餡子と、家から持ってきた唐辛子だ。 こいつを放り投げる。 曲線を描いて放り投げられたそれは、ちるのの目の前に唐辛子、離れた場所に餡子が転がった。 ちるのはそれを視認したようだ。さて、どうする? ゆっくりは揃って甘い物が大好きだ。その逆に辛いものは大嫌いで毒物にすらなりうる。 ゆっくりなら当然餡子に向かう。辛いものは当然無視する。 しかし…ちるのは… 思いっきり唐辛子の方へと向かったッ!躊躇う事無く口の中へと唐辛子を頬張るちるの。 顔色が突然変わり、激しく暴れ始める。 「!??!!!??!?」 「(本物のバカだー!!)」 激痛でのた打ち回るちるの。水を求めて水辺の水をガブ飲みする。 水と一緒に口に入ってきた藻を咀嚼するとその藻を食べ始めた。 さっき見つけた餡子などもはや忘却の彼方である。 「(少しだが…わかりかけてきたぞ…)」 ちるのにとってはエサの味など二の次なのだ。どっちが近くにあるか。 どちらが先に食べられるか。そちらの方がずっと重要なのだ。 そして終始無言。食べる時もやかましいゆっくりにとっては異例だ。 そこにゆっくりに馬鹿にされる理由があるのだろう。 めーりん種などは喋れない事を理由に、ゆっくり達から迫害されている。 ちるのに至っては「ゆっくりしていってね!」すら言わない上に 食べ物の味にも全く執着しない。 人間で例えるなら、現代人が原始人を見るようなものなのだろう。 ゆっくりは自分達が称する「ゆっくり」を求めて活動する。 うまいエサを見つけるため。快適な住居を手に入れるため。 …最もその結果、人間の前に姿を現して結果駆除されてしまう方が多いのだが。 そういったものをちるのは全くと言っていいほど求めない。 人間の感覚で言えば、文明のかけらもないジャングルの奥地で、 うまくもない草や虫を拾い食いして生きるように見えるのだろう。 それは馬鹿にされるはずである。 「ゆっ、ゆっ、あんなところにあまあまがおちてるんだぜ!!」 「れいむたちがむーしゃむーしゃするよ!!」 そうこうしている内に、ちるのがガン無視だった餡子を嗅ぎつけてまりさ、れいむがやって来た。 藻を食べているちるのの前を通り過ぎ、餡子へと貪りつく。 「がーつ、がーつ!めっちゃうめぇ!!」 「まりさ、れいむのぶんをとらないでね!!」 オイオイ、それお前らの仲間の中身だぞ。男はふと思う。 浅ましく仲間の死肉にかじりつくゆっくりを見て男は呆れた。 「こんなおいしいものをむししてくささんたべてるちるのはばかだね!!」 「とんでもないまるきゅーなんだぜ!!ほんとうにちるのはていのうなんだぜ!!」 ゆっくりコンビはちるのを罵倒している。 一方のちるのは聞こえているのかいないのか、全く反応していない。 「おいまるきゅー!!ばかってのはおまえのことなんだぜ!!くやしくていいかえせないのかだぜ?」 「まりさ、ちるのはばかだからなにもいえないんだよ!!ゆっくりしてないね!!」 「「げらげらげら!!!」」 相手が黙っていれば言いたい放題である。こいつらは間違いなくゲスであろう。 当のちるのは全く意に介していない。 「ゆぎぃぃぃ!!!なにかいうんだぜ!!まるきゅー!!!」 「ばかなちるののくせにまりさをむしだなんてなまいきだよ!!!」 馬鹿にしている側が相手にされなくて怒り出すとは… どっちが馬鹿にされているのかわからないな、男はそう思った。 「ばかなちるのはしぬんだぜ!!!」 まりさがキレた。ちるのに体当たりを仕掛ける。 どっちがゆっくりしてないのか。 「!!?!?」 ちるのは困惑してこそいるが、大して効いていないようだ。 体は結構頑丈なのかもしれない。スィーがぶつかっても怪我をしなかったと聞いた事がある。 「いまさらあやまってもおそいんだぜ!!ちるのはゆっくりしね!!」 「!!!!!」 ちるのは攻撃されていると認識したようだ。その後の切り替えは早かった。 まりさの体当たりにカウンターする形で体当たりをし返す。 「ゆべっ!?」 まりさは軽く吹っ飛ばされ、蓮の葉から水の中へとまっさかさま。 「ごべえぇぇええ!!!おぼれるんだぜぇぇえ!?!!?」 「ばりざぁぁあ”あ!!!」 ガボガボと泡を立てながら見苦しく水の中へと沈んでいく。 れいむは真っ青な顔でそれを見つめる。 「まりさをころしたちるのはしんでね!!!」 れいむもまたちるのに攻撃を仕掛ける。 しかし、ちるのはそれを見越してか口から中身のかき氷をれいむに吹きかける。 「ゆぎゃああああ!!!づめだいぃぃいい!!!!」 れいむが冷たさに身悶えしている間にちるのは体当たりを仕掛けた。 「ゆぎゃああぁあああ!!!!みずはだめだよぉぉおお!!!! がぎゅ、げ、ぎょっ!!でいぶをだっ、がぼげげげぇぇえ!!!!」 れいむも仲良く湖の底へとダイブした。 男は結構強いな、そんな風に思った。 最もあのゲスコンビが頭も悪ければ実力も弱すぎただけかもしれないが。 突然ポツリポツリと雨が降り始めた。 水に強いと思われるちるのもさすがに雨は危険なのだろう。 ポンポンと跳ねて茂みの中へと隠れていった。 「あれが、ちるのか…」 男は感心したように呟いた。 全く喋る事もない。ゆっくりなど全く求めていない。 非常にゆっくりらしからぬゆっくりである。 しかし、今まで見たゆっくりを主張する連中を見て微塵も思わなかった、 「ゆっくりしている」という感想を男は抱いた。 どいつもこいつも、ゆっくりはゆっくりしていない。 どのゆっくりも自分がゆっくりする事を求め、主張し、 結果として自滅していく。全くもって救えない存在だ。 連中の言うゆっくりを最も放棄し、仲間からもゆっくりしていないと蔑まれる、 あのちるのが人間から見て最もゆっくりしているように見えるとは何という皮肉か。 目から鱗が落ちたような気分で、男は帰路についた。 ああいうゆっくりもいるもんだ。そんな事を思っていたその時。 「ゆっ!!にんげんさん!!かわいいれいむにあまあまもってきてね!!! れいむはゆっくりしたゆっくりなんだよ!!!ゆっくりしてないではやくしてね!!! ぐずはきらいだよ!!」 男は石蹴りのように派手にれいむを蹴飛ばした。 「ゆげえぇえ!!!!」 れいむは地面をバウンドし、餡子を吐いて転がった。 「いつも寄ってくる…こんなアホが… なんで要求しに寄ってくるんだ…?来なければいいものをッ!」 「ゆべっ…」 そのままぐちゃり、と雑草を踏むように踏み潰して去っていく。 さて、あいつになんて話してやるかな。 この間のはゲスと虐待ばかりの話だったからな、新鮮だろう。 男のゆっくり観察はまだ続くだろう。 昔FLASHで見たゆっくりチルノがアレな外見だったのでふと思いついて書いた。 ゆっくりちるのがどういうキャラか固まってないから思い切り捏造してしまった。 ゆっくりは好きだよ。れいむとまりさ、ありす以外は。 このSSに感想をつける
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男が家に帰てきた。その戸を開ける音にビクついたものが居た 「うー?」 ゆっくりの中でも胴体を持つ珍しい種のれみりゃだった 以前夜道を歩いているところを見つけて捕獲した そして今は部屋の隅に設置してあるゲージの中で飼育されていた ゲージは縦横5mと以外と広く、食事も適度に与えられていた 「うー♪ うー♪」 れみりゃは男が抱えているものに興味深々だった れみりゃ種と同じ胴体をもつ種のゆっくりフランだった 「ギャオー!! ギャオー!!」 男の腕の中で激しく暴れまわっていた 「うー♪ トモダチ? うー♪ トモダチ?」 これから行われることも知らず、手を叩きはしゃぐれみりゃ 男はゆっくりフランを床に降ろすと、暴れるその手を力でねじ伏せて。両手両足を皮ベルトで拘束する 「ゆっくりしね!!!ゆっくりしね!!!・・・・・・・もがッ!!」 さらに叫ぶ口に布を巻きつけて、口を封じる 「フーー!! フーー!!」 羽だけがバタバタと暴れる ゆっくりフランを床にうつぶせに組み伏せてると、着ているスカートをまくりさらに下着を脱がせる 「ングー!! ングー!!」 その露になった幼い尻のその肛門に男は容赦なく、中身の入った酒瓶を突っ込んだ 「ッッ!!!!!!!!!」 もの凄い勢いで腸にアルコールが流し込まれて吸収されていく 「・・・・・ッ・・・ン・・・・・・・・」 急性アルコール中毒になり徐々に意識が遠のいていくゆっくりフラン 羽が枯れた草のようにしおれだし、口の布の越しに今に消え入りそうなうめき声だけが聞こえてきた フランがおとなしくなるのを確認して酒瓶を引き抜く ブピィィィィィという不快な水を音とともに餡子混じりの酒が肛門から逆流し、噴出した 部屋は一瞬でアルコールと餡子の甘ったるく生温い空気に包まれる 男は衣服脱ぎ、既に臨戦状態だったイチモツをその純真無垢な乙女の秘所にあてがう そして前戯も無しにいきなり奥まで突き刺した ブチブチと中を削りながら進むペニス 本来絶叫するはずの激痛にも関わらず、とうのゆっくりフランは感覚が麻痺しているため大した反応は見せず、夢と現実の狭間を行き来していた 「いぎゃあああぁぁぁああああぁあああぁぁぁあぁぁあぁぁあああ!!!!!」 絶叫したのはゲージの中のれみりゃだった。れみりゃは性器を弄られたことはあったが、まだ性交はされていなかった 自分と似た種の仲間がレイプされている、目の前の光景がただただおぞましかった ゲージの柵を握りガシガシと揺らす。もちろんそれぐらいではゲージはびくともしないのはわかっていた わかっていたが目の前の仲間が傷つけられるのが我慢ならなかった ここに来て飼われてから、れみりゃはいっしょにいて寂しさを紛らわせてくれる“仲間”が欲しかった 本当は怖かった。許されるなら隅で毛布をかぶりガタガタと震えていたかった バックから犯されるゆっくりフラン 確実に内臓を破壊しながらストロークを繰り返す男 腰が動くたびに膣内から血のように赤い餡子が掻き出された 「いギィッ・・・・・・・・イギッ・・・・・・・・・・アグッ・・・・・・・・ヒグッ・・・・うあ゛~~~~~~」 いつの間にか口の布は緩み外れていたが、そこから垂れ流される声に感情は無かった。ただ肺から空気が漏れたような音しかしなかった そんなうめき声など意にも介さず。男はただ我武者羅に快感と征服感に身を任せて、ひたすらピストン運動を続けていた ジュポジュポ ヴぁ~~~~~~~ ガンガンッ!! ペニスが膣をかき回す音と、ゆっくりフランのうめき声と、ゲージを揺らす音はもうしばらく続きそうだった ゆっくりレイパーが果てた頃には、ゆっくりフランの膣内はズタズタだった。種族の特性故に傷は短時間で再生するが、一度破壊された処女膜はもう元には戻らない ゆっくりレイパーはアルコールで完全に意識の飛んだゆっくりフランを毛布で包むと、れみりゃのいるゲージの中に寝かせた ゲージが閉じられるとゆっくりレイパーがゲージの中にお菓子を4つ放り込む れみりゃは2つ食べて、残りの2つには手をつけなかった お菓子を2つ食べ終わると、れみりゃは気絶するフランの元に恐る恐る近づいた れみりゃにとってゆっくりフランは天敵であることを本能が感じ取っていた 近づいて酒で真っ赤になった頬を指先でつつく。しかしフランの反応は無い 自分を襲ってこないと分かると本能が警戒を解いた ゆっくりフランの頭を持ち上げて膝枕をして頭を優しく撫でて介抱する 「うー♪うーうー♪う~~~~♪うー♪うー♪うー♪う~~~~うー♪うー♪」 そして微笑み、まるで赤ん坊を寝かしつけるようにれみりゃは歌い始めた この夜、酔いからさめたゆっくりフランは遅れてやってきた激痛にのたうち回ることになる れみりゃはその間、ゆっくりフランを励ますようにずっと抱きしめていた その姿はまるで姉が妹を守るようで尊かった